「テレビCMの制作」という枠を超えた、WEBマーケティングに精通したラスクルならではのアプローチに注目が集まっている。その制作現場は、どう動いているのか。
「テレビCMは効果が測れない。そこに投資をするのは怖い、と思っていました」
そう話すのは、ラクスル広告事業本部のマーケター・西 功暉氏だ。前職ではWEB広告の代理店に勤務し、“効果の見える” 広告を手がけてきた。「テレビCMも工夫次第で制作費は抑えられますし、WEBマーケティングの手法で効果測定の可視化も可能になった。社内に、企画だけでなく編集までできるスタッフがいるため対応も迅速で、テレビCMに対する先入観はすっかり覆されました。受注から10日後にCMが放映された時には、自分たちのことながら驚きました」
通常は、依頼を受けてから放映まで平均2カ月以上を要する。クライアントの課題を分析し、1週間程度で市場調査を実施。その間、写真を使ったコンテを作り、撮影、制作、編集、修正作業を行っていく。
クライアントからの提供素材や既存の映像素材でCMを制作することも可能なため、スピードやコストの削減が求められる依頼にも柔軟に対応してきた。
例えば、チーフCMプランナー/チーフプロデューサーを務める吉良秀和氏が担当したアトラエのサービス「Green」のテレビCMでは、予算を抑えるため、撮影でラクスルのオフィスを使用した。
「制作会社さんと話し合い、予算効率を考え、オフィスシーンは弊社を使用したりしました。私が前職でCMプロデューサーだった知見も含めて、制作会社さんやCM監督と話し合うことで、予算効率や新しいアイディアを含めて、顧客に最善の制作を提案出来ると考えています」
現在、資料請求などによるファーストコンタクトは月に300件以上、そこから面談につながるのは50〜100件程度だそう。
「その中で最終的に依頼をいただく企業様は、自分たちの課題を意識し、やりたいことが明確に決まっているケースがほとんど。『認知度を上げたい』という目的もあれば、『新規顧客の獲得』『サービスの売り上げアップ』、中には『既存会員のモチベーション維持』など求められる効果はさまざまです」
低コストでも効果が得られるCMを作るためには、顧客のKPI(Key Performance Indicator)がどこにあるかを的確に見極めることが重要だと、コンサルタントの青山碧花氏は続ける。
「例えばアプリの会社なら、KPIのポイントがダウンロード数、休眠ユーザーの掘り起こし、課金者数、継続率、売り上げなど、複数あります。その中で、“今回のテレビCMの目的”を『新規ダウンロード数』と定めたら、さらにそれが『潜在ユーザー向け』なのか、『顕在ユーザー向け』なのかを分析して、目標KPIに達することができるクリエイティブを提案・制作していきます」(同氏)
顧客のKPIに寄り添ったラクスルのCM制作は、放映後も重要だ。CM放映した番組や時間帯による比較や、効果測定を行って、その後のさらなる課題の抽出や、次なる展開に向けた提案に力を入れている。
「分析をしていくと、必ずしも、視聴率が高かったり、ターゲットの含有率が高い番組が、効果が良いとは限りません。ラクスルの場合、BtoBなので、高視聴率をマークする人気のバラエティ番組よりも、視聴者が限られる報道番組のほうが高い効果を得ることができました。担当させていただいたクライアントさんで、あるタレントさんが出演している番組との親和性が高いという結果が出たケースもあります。そこまで解析する。そうして初めて、有効な効果測定ができると考えています。そのため、クライアントにも、安いローカルエリアで出来るだけ多くの番組に放映して、どの番組が自社の商材と相性が良いのか、見極めることをおすすめしています」(同氏)
低コストでも効果が見える。だからこそ、特に事業成長を効率よく実現したいスタートアップを中心に、これまでテレビCMが広報の選択肢になかった企業の可能性を広げることにつながっているのだろう。
初めてのCM作りでラクスルが注目されるワケ宅配クリーニングサービス「リネット」のCMでは、続くメインコピーをクリーニングに「行くのは荷物が多くて大変」「行く時間がない」の2つのパターンで放映。効果は、CMが放映された後の「社名検索」の上昇率などをもとに測定・分析した。ラクスルにテレビCMの制作を依頼するクライアントは、初めてテレビCMを実施する企業が大多数を占める。さらに顧客の過半数は創立10年以内の企業で、特にラクスル流メソッドに信頼を寄せるWEBサービスのスタートアップからの支持が厚い。
「インターネット上では皆、知っている単語しか検索しません。社名に限らず、サービス名もまた、新しい概念であればあるほど検索ではたどり着けない。今まで知られていなかった企業にこそ、我々のノウハウは有効だと思います」(田部氏)
同時に、テレビCMで認知度が上がれば、WEB広告の効率も良くなるとマーケターの西氏は指摘する。
「例えばすでに実績を上げている企業でも、テレビCMを打つことで認知度が高まり、まだ伸び代があったことに気づくケースもあります。テレビCMという可能性をもう一度見直してほしいですね」
HRBrainの場合、「人事評価クラウド」というサービス自体が知られていないため、タレント起用で一気に認知度をアップさせる手法をとった(写真上)。IT業界に特化した転職サイトGreenの場合は、A/Bテストで具体的シチュエーションよりイメージのほうが効果的という結果に(写真下)。
初めてのテレビCMを、効果的に。
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