ファーウェイCEOの任正非は8月16日、英国のスカイニュースのインタビューで、米国との対決姿勢を明確にした。「仮に米国政府が当社に対するアンドロイドOSの提供を差し止めるとしたら、ファーウェイ製のOSが第3勢力として浮上する。それは、米国にとって困った事態になるはずだ」と任は述べた。
ファーウェイが先日リリースした自社製OSのHarmonyは、現時点ではスマホではなくIoTデバイス向けのOSとなっている。しかし、同社は数年後にはグーグルのエコシステムに置き換わるOSの完成を目指している。
ファーウェイはHarmonyと同様のスタンスで、独自の地図アプリの開発を計画中だ。「Map Kit」と呼ばれる同社の地図サービスは初期段階では企業向けだが、時間をかけてコンシューマー向けサービスに拡大する計画だ。
China Dailyの記事によると、ファーウェイ幹部は同社の地図サービスがグローバル企業にとって必須のものになると述べている。ファーウェイによるとモバイルアプリの50%以上は位置情報を利用している。Map Kitは40言語に対応し、リアルタイムの交通情報や高速道路の車線を含む精緻なデータを表示するという。
ファーウェイの通信インフラ機器は160カ国以上で利用されており、そのデータがMap Kitのバックボーンとして活用される見通しだ。
このタイミングでファーウェイが地図サービスを発表したのは、決して偶然ではない。ドナルド・トランプはファーウェイに対する制裁を緩和すると宣言したが、その発言を再び撤回した。変化の激しいスマホ業界で、長引く貿易交渉の行方をいつまでも待ち続ける訳にはいかないのだ。
グーグルマップに匹敵する精度を、ファーウェイが即座に実現することは困難だ。アップルも地図サービスではいくつもの失敗を犯してきた。しかし、ファーウェイの究極のゴールは、地図サービスでグーグルに勝つことではなく、スマートフォンのエコシステムを根本から覆すことにある。
米国政府や西側のテック企業大手は、ファーウェイが示す対決姿勢をもっと重大に受け止めるべきだろう。中国とロシアが結託し、米国が作り上げた世界基準をひっくり返せば、後戻りが出来ない事態に突入する。ロシアのヤンデックスはファーウェイが目指すサービスを、強力に後押しすることになる。その結果、最も大きな打撃を受けるのはグーグルになる。
中国の政府系メディアが最初に、このニュースを報じたことは偶然ではない。これは中国政府からの明確なメッセージであり、西側の政府や企業は事態を重大に受け止める必要がある。