私の場合は語学だったが、同じモデルを使った他の事例も存在する。
(1)佐藤雅彦さんは、広告代理店のクリエーティブ局に転局したとき、過去のCM映像をひたすら見たという。そこから、さまざまな独自の「ルール」を発見し、その後の仕事に生かし数々のヒットを生み出している(『佐藤雅彦全仕事』〈マドラ出版〉より)。
『佐藤雅彦全仕事』。CM映像を浴びて発見した「ルール」に基づいて数々のヒットを生み出した。
(2)色川武大さんは、博打について同じことを書いている。最初はほかにどんなプレイヤーがいて、どういうクセがあるのかなどをただただ見続ける。打てるとわかるまで絶対に博打を張らない(『うらおもて人生録』〈新潮社〉より)。
『うらおもて人生録』。相手のクセをよく観察し、勝てるとわかるまで絶対に博打を張らない。
(3)AIのディープラーニングも同じだ。オランダの美術館やマイクロソフトが、AIにレンブラントの絵画を浴びるように学習させ、そこから見えてきたルールで300年以上のときを経て新しい「レンブラント」の絵を描かせた(「The Next Rembrandtプロジェクト」より)。
AIがレンブラントの過去作品を浴びるように見て、見つけたルールで描いたレンブラントの「新作」。
何を学ぶにもコツはとてもシンプル。
1. 予習をしない。
2. ただその場にいる。
3. とにかく浴び続ける。
4. わからないながら予測する。
5. いつの間にか習得している。
わからない状況に長い時間耐える忍耐力を必要とするが、それさえ我慢できれば、必ずいつか発症する。わからないことが徐々にわかることに変わる過程を繰り返すのではなく、わからない状態がずっと続き、ある日飛躍的に理解できる成長過程だ。だから、つらくなっても、成果が出なくても決してマニュアルを見てはいけない。見てしまうと、固定概念に縛られ浴び続けても発症しなくなるからだ。
「花粉症型学習モデル」はほかにも転職や新ビジネスの立ち上げ、未知数な研究分野への挑戦、料理の習得時にもオススメだ。
せっかくなので、花粉症型学習モデルで何か新しい能力を発症してみよう。そして、忘れないで。いわゆる努力は不要。いつか、必ず発症する。
電通Bチーム◎2014年に秘密裏に始まった知る人ぞ知るクリエーティブチーム。社内外の特任リサーチャー50人が自分のB面を活用し、1人1ジャンルを常にリサーチ。社会を変える各種プロジェクトのみを支援している。平均年齢36歳。合言葉は「好奇心ファースト」。
キリーロバ・ナージャ◎電通Bチーム世界の教育担当。ロシア、日本、イギリス、フランス、アメリカ、カナダ各国の現地校で教育を受けた。その経験を基にした絵本「ナージャの5つのがっこう」を出版。