米レストランが売り出した「一生パスタ定期券」 500ドルは妥当か?

オリーブ・ガーデン・レストランのパスタ Gettyimages


約2500万円の乗り放題定期券

WSJは、この「一生パスタ定期券」を、かつてのアメリカン航空の「一生乗り放題定期券」を反面教師としながら、比較対照していた。アメリカン航空は、1980年代に、保有現金の手薄さから、経営戦略として「一生乗り放題定期券」を発行したことがある。

当時の金額で、たった約2500万円(現在の価値に直すと約6000万円)で、同社の飛行機乗り放題定期券を発行し、一気に大きなキャッシュフローを手に入れた。同伴者(別に配偶者でなくてもよく、ただ一緒に同道する人間であればよい)の「一生乗り放題定期券」は1500万円だった。

1985年から1998年まで同社の会長を務めたボブ・クランドールによると、企業の幹部たちが、ステータスとして買ってくれると想像したものの、蓋を開けてみれば、「自分たちよりずっと賢い消費者がたくさんいて、たいへんなことになってしまった」と、その計算違いを今になって認めている(ザ・エコノミスト誌)。

アメリカン航空は、1994年にこの定期券の発売をやめているが、その後も、数回、復活させて、キャッシュフローをとりにいった。3億円の乗り放題定期券を2004年に売ったのが最後とされているが(こちらは高すぎて売れなかった)、つまり、経営困難時には、一気にキャッシュフローが手に入る定期券は、売り手がついつい手を伸ばしてしまう禁じ手でもあるということだ。

ロサンゼルス・タイムズによると、今ではアメリカン航空は、この過去の遺産(違算)を収拾すべく、定期券に不正使用がないか目を光らせているという。例えば、同伴者パスを用いて、会ったこともない人と同伴であるふりをして飛行機に乗せ、あとでその同伴人からお金をもらう(事実上の切符の販売)、そんな形で「同道のルール」を破っているという事象を現場を押さえ、定期券を没収するなどの防御策と事後処理に注力しているという。

しかし、買った側の人間から見れば、同道のルールなどが明確でないとして(WSJによれば)、訴訟沙汰にもなっている。

ロサンゼルス・タイムズは、この乗り放題定期券で3000万マイルも飛んだという武勇伝や、年間16回もロンドンに遊びに行ったというエピソードを紹介するなどしている。「乗り放題」の高揚感は話としては面白いが、むしろ定期券を使うことそのものが目的になっているように思え、なにか悲しい人間の性を見せられた感じがしてならない。

連載:ラスベガス発 U.S.A.スプリット通信
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文=長野慶太

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