72%の作業代替を実現。宇宙用の作業代行ロボット、開発元が約4.4億円の資金調達

GITAIが開発する宇宙⽤作業代替ロボット


「自分も100回考えて、宇宙はないと思っていました。ただ、一見簡単そうな家庭用ロボット、調理ロボットの方がビジネス的に成り立つのは難しい。さまざまなシーンを想定して安全を追求しなければならないし、現状、ロボットができることも限られている。宇宙はトラフィックがでるまでは長いですが、高単価なのでビジネスになる可能性が高い。また宇宙ステーションでの作業は、地上よりも簡単なものが多く、イレギュラーなことが少ないので技術的にも実現可能性が高い。スタートアップではよく『悪く見えて良いアイデアを探せ』と言われるのですが、このアイデアがまさにそれかな、と思いました」

グーグルに買収されたSCHAFTの創業者もチームにジョイン

その結果、GITAIは宇宙⾶⾏⼠の負担軽減、宇宙空間における作業の⼯期短縮と費⽤削減を⽬的に、国際宇宙ステーションの船内・船外作業を宇宙⾶⾏⼠の代わりに実施可能な半遠隔型、半自律型ロボットの開発を目指すことになった。

2018年12⽉にJAXAと共同研究契約を締結し、2018年3⽉にはアジア最⼤の衛星通信事業会社のスカパーJSAT社とMOU(業務提携検討に関する覚書)を締結し、作業代替実験を実施。最新のGITAIロボットのプロトタイプ(6号機)で行った実験では、これまで人間が行っていた作業の72%を代替することに成功したという。



今年の3月には元SCHAFT(2013年にGoogleにExit)のFounder&CEOの中⻄雄⾶がCOOとして経営に参画。またメンバー9⼈のうち6⼈がPh.D(博⼠号)取得者で構成され、うち5⼈は東京⼤学博⼠号取得者、さらにそのうち2⼈は東京⼤学で助教を勤めた経験を持つ人材が集まっており、中ノ瀬はチームにも「最高の人材が集まっている」と自信を持つ。

こうしたメンバーとともに、現在、社内には国際宇宙ステーションと同じような環境が作られ、日々、開発実験が行われているという。

「デモで奇跡の1回で人間の何十倍も時間かかって出来たのでは、出来たと言えない。人間よりも3倍以内の時間で100回やっても大丈夫な状態を目指しています。まずは作業コストを10分の1まで減らすことを目指していますが、最終的には100分の1まで減らせるはず。そのために量産化もしないですし、コストを下げる努力もしない。お客さんが欲しい性能を要件に合わせて実現することを目指していければ、と思っています」

引き続き、開発を進めていきながら、先端技術を用いて遠隔で周りの環境や人々と応対ができるアバターロボットを開発するコンテスト「ANA AVATAR XPRIZE」に出場し、そこでの優勝を目指すというGITAI。

まずはロボットの完成が第一目標となるが、最終的には販売して終わりではなく、RaaS(Robotics as a Service)を宇宙で提供したいという。「使用量に応じて代金を請求する作業代行サービスを提供したい」と中ノ瀬は展望を語った。

文=新國翔大 写真=小田駿一

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