マネー

2019.08.21

「Vチューバー文化」を世界へ。クラスターに投資した理由

左:手嶋浩己 右:加藤直人(Photo by Toru Hiraiwa)

加藤直人は2015年7月、仮想現実(VR)サービスを手がけるクラスターを創業。3Dキャラクターの「バーチャルユーチューバー(Vチューバー)」らがVR空間で交流し、音楽ライブやeスポーツ大会、会議などができるバーチャルイベントサービスを提供する「cluster」を運営している。

XTechVentures共同創業者/ジェネラルパートナーの手嶋浩己は、18年9月に同社へ投資を行い、支援している。前職ユナイテッド時代の17年5月にも同社へ投資をしている。

手嶋:出会いはクラスター創業後の2016年。スカイランドベンチャーズの木下慶彦さんに紹介してもらいました。数多く紹介された起業家のうちの一人でしたが、ムスッとして目も合わせてくれないし、「声をかけて悪かったな」と(笑)。

加藤:不機嫌だったわけではないです(笑)。僕は当時、3年間のひきこもり期間を経て、上京して起業し、ずっとプロダクトだけを作り続けていた。ただ人とコミュニケーションをとることに慣れていませんでした。

手嶋:前職時代に投資をした理由は、投資方針が「当たったら大きい案件を厳選してやる」。だから、初期段階でのメルカリ、delyにも思い切って投資できた。当時、Vチューバーの概念もないころで、ビジネスとして成立するかあったくわかりませんでしたが、世の中の進化する方向と合っているなと。また、熱意を持って続けられる人が希少な領域であり、企業として生き残れたらいつか勝つのでと、投資をしました。

加藤:時間軸はわからなくても「VRは絶対に来る」「僕だったら、VRのエンターテインメント事業を加速させられる」という気持ちがありました。Vチューバーは予想していませんでしたが、バーチャルなタレントが登場する未来は確信していました。

手嶋:ただ、クラスターに投資をしたあと、何をやってもマーケットに響かない時期がありました。そのとき、ピボットしかけたんです。「既存サービスをやめてやるならいいけど、ふたつ同時並行は悪手だ」と忠告したのですが、加藤さんは「どうしようかな」と迷っていた。そのタイミングで、Vチューバーの波が来て、クラスターだけを継続することにした。

加藤:気がついたら、その波の真ん中にいて、ユーザー数も急増。ここで勝負をしなければならないと、手嶋さんに追加の資金調達のお願いをしに行きました。
次ページ > 1案件最高額である2億円を投資──

文=山本智之

この記事は 「Forbes JAPAN 社会課題に挑む50の「切り札」」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

タグ:

連載

私がこの起業家に投資した理由

ForbesBrandVoice

人気記事