原田:睡眠時間はこうあるべきだ、という常識に囚われていた、と。自分自身の常識、そして社会の常識を変えることは難しいもの。しかし無理に一つのタイプに自分を当てはめると余計おかしくなってしまうなら、変えていくべきです。一人ひとりの睡眠資本にとって最適な、睡眠の多様性が認められるようになれば良いですね。
小林:社員個人が自分のクロノタイプや適切な睡眠時間を知り、会社がそれを尊重した働き方を提供することが大切です。ニューロスペースでは、個人の睡眠のあり方を尊重した上で働き方を計画し、就業規則などを改訂しているんです。
原田:企業の中でも、いま「良い仕事」や「良い企業」という価値観のモノサシが、大きく変化し始めていると感じます。
面白法人カヤックの柳澤大輔さんの本『鎌倉資本主義』では、良い働き方の新しいモノサシとして「地域」に着目されています。まず何を仕事にするかという財源や生産性の面である「地域経済資本」、次に誰と仕事をするかという人の繋がりの面である「地域社会資本」、そしてどこで仕事をするかという自然や文化の面である「地域環境資本」という3つの概念があげられています。
今までは、会社は社員に給料を差し出せば良いという考え方でしたが、この会社は従業員が幸せに働けるか、そして差し出せる幸せはどんな形か、を考えると、良い会社の定義が変わってくる気がします。
また、佰食屋代表の中村朱美さんの本『売り上げを減らそう』では、1日に100食しか出さないランチ専門店という業態が提示されています。売り上げを上げるために営業時間を伸ばすと、結果的に従業員がプライベートで幸せを育む時間が犠牲になる。時間に対して売り上げがそこまで伸びないのであれば、いっそのこと1日100食に限定し、売り切れたら終わる方が良い。という考え方で、毎日売り切れだそうです。看板のステーキ丼を中心に3種類だけ、というところもポイントです。
働く時間を中心に休む時間を考えるのではなく、休む時間の方から働く時間を考えると、働き方が変わる。睡眠資本はその点で、良いキーワードを生み出せたのではないかと考えています。
小林:時間とお金に囚われているのが現代のビジネスパーソンなのかもしれません。睡眠資本の考えのもと、きちんと眠れている会社やチームの性格や心の落ち着きなどの安心感が、企業価値として評価される社会になれば良いなと思います。