ビジネス

2019.08.20

隈研吾と家具ブランドTime & Styleが提唱する「透明な設計」とは

オランダで開かれた展覧会「Furniture that blends into the surroundings(環境に溶け込む家具)」にて


欧米の生活に比べて、日本の暮らしは家具が中心的ではなかったと隈は説明する。畳の間で直接、もしくは座布団に座る文化において、椅子は必要なかった。テーブルといった家具ではなく、より小さく繊細な銘々膳が使われた。同時に、日本の伝統的な家屋には壁がない。部屋と部屋、もしくは中と外が壁で分断されるのではなく、障子や襖のような建具によって仕切られていた。

こうした日本の暮らしや建築の背景にある透明性や軽さの考え方が、デザインに生かされている。例えばソファは、一般的なソファと隈がデザインしたタイムアンドスタイルのソファの決定的な違いは角にある。布団や座布団にあるような薄くて軽い角の形状が、そこに採用されているのだ。



グローバルに通用する「透明なデザイン」

隈のプレゼンは、透明性のある建築や家具デザインの話が中心ではあったが、その中には、サステナブルなビジネスに対する暗黙的なメッセージが含まれていたように感じた。

木材や地元の素材にこだわり、空間を含んだ幾何学的構造設計により、無駄が省かれる。結果として、隈の建築やタイムアンドスタイルの家具は、シンプルでミニマリスティックな見た目であることが多い。

こうしたアプローチやデザインは、結果的に欧州のデザインビジネスの文脈における、時代の潮流にあっているようだ。自然環境との共存や、素材へのこだわりは、人々が求める環境意識と呼応する。さらには、侘び寂びを感じられるようなミニマリスティックな「ジャパニーズ・デザイン」は、オランダに限らず欧州各国でも定着してきている。

隈とタイムアンドスタイルが発信する、日本の「透明なデザイン」は、今後もよりグローバルに浸透していく兆しだ。

連載:旅から読み解く「グローバルビジネスの矛盾と闘争」
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文=MAKI NAKATA 写真= Ayako Nishibori

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