ギャラリー空間へと模様替えされたショップの一階部分にて、6月22日から8月18日まで行われた展覧会「Furniture that blends into the surroundings(環境に溶け込む家具)」の関連イベントだ。真夏のアムステルダムで、現地の顧客やオランダ在住の日本人などが集まり、熱気に溢れた会場。それとは対照的に、隈の打ち出すコンセプトやデザインは、透き通った涼しげな空気が感じられるものだった。
隈が率いる「隈研吾建築都市設計事務所」は、国内外の様々なプロジェクトを手がける。現在、多くの日本人が注目しているであろう「新国立競技場」の設計にも携わる。
一方、タイムアンドスタイルを運営するプレステージジャパンは、代表の吉田龍太郎氏がドイツのベルリンを拠点に活動をスタートさせ、1992年に日本法人を設立。2008年には北海道の旭川に自社工場を設立し、現在都内に4店舗を構える。アムステルダムのショップは2017年にオープンした。
隈は、建築プロジェクトに際して、家具デザインも手がけており、2009年から、タイムアンドスタイルと共に様々なプロジェクトを通して多くの家具を製作してきた。日本の伝統的な文化や暮らし、知恵からの学びを生かすこと、木材・木工へのこだわりが、両者の設計アプローチの共通項だ。
過去10年間の共同の取り組みをまとめた大型本も制作した。(筆者撮影)
軽さと透明性のある家具
今回、過去のプロジェクトを紹介する隈のプレゼンテーションのキーワードの一つが、「透明性(Transparency)」だった。建築の向こう側が見渡せるようなガラスの壁面を取り入れたり、木材の柱同士に空間を持たせながら組み合わせることで、透明感のある建築が生まれる。隈が提唱する、周囲の環境に溶け込む建築のあり方を目指す「負ける建築」が体現化されている。
家具のデザインに対する考え方も、建築デザインの考え方の延長線にある。まさにこの展覧会のテーマである、「環境に溶け込む」ような家具デザインの鍵は、軽さと、軽さから生まれる透明性だ。