誰もがアクティビストになれる時代に。『NEW POWER』著者が提唱

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私はオーストラリアの政治を参加型に変えるために、政治組織「ゲットアップ」を共同創業しているのですが、これに際し、事を起こす1年前から政財界の重鎮や、ユニオンのトップ、地球環境保護団体やベンチャーキャピタリスト、NGO・NPOといった多岐にわたる組織や団体に、私たちの動きや考えを事細かに説明し、ムーブメントを後ろ盾してもらえるよう手はずを整えました。

その結果、オールドパワーの象徴ともいうべき人たちが組織のボードメンバーになってくださり、結果、全世界で1500万人を抱えるグローバル組織に発展することができたんです。

また、根回しの他にも、ニューパワーを使ってムーブメントを起こそうという人へのセーフティーゾーンを設けてあげることも大切です。実際、「#MeToo」運動のときは、「Time’sUP」というセクハラ撲滅を訴える賛同を示すムーブメントが起き、連帯感や安心感を生んだといわれています。

次に、新しい力が台頭してきたからといって、必ずしもそれだけを使えばいいというわけではありません。ニューパワーとオールドパワーはブレンドさせることもできます。むしろその相互補強によって、相乗効果を生み出すことさえ可能になります。

そして、忘れてはならないのが、ニューパワーは、多くの人たちを巻き込み、その力をもって推進するものだということです。ですから、ムーブメントを起こし、システムを作り上げた人や組織がコントロールしようとしてはいけないのです。自分がリーダーと名乗り出たり、手柄を私物化したりせず、大きなうねりを自然のパワーの流れに任せていけばいいのです。

たとえば、ある米国の病院で、患者の個人情報を管理するチェックリスト・マニュフェストの活用がトップダウンで提案されたことがありました。ただ、病院からの命令に従う医者はほぼ皆無でした。

しかし、医師たちが自らその重要性と必然性を認識し、仲間同士で情報を拡散し始めたことから、チェックリストは有効に使われるようになりました。このムーブメントは結果的に成功につながり、改めて、ニューパワーは参加者の自主性を尊重し、流れに任せる方がうまくいくということを確認しました。

最後に、ニューパワーを使い、いまや誰でもアクティビストになれる時代がきました。傍観者でいてはもったいない。あなたのほんの少しの意識と行動だけで、社会を変えることができるんですから。


ジェレミー・ハイマンズ◎パーパス共同創設者兼CEO/ゲットアップ共同創設者。世界最大規模のオンラインコミュニティ「アヴァース」共同創設者。ハーバード大学、シドニー大学で学び、マッキンゼー、オックスフォード大学研究員を経て現職。

文=谷本有香

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