そして、17年に世界的な広がりを見せた「#MeToo」運動。いずれもソーシャルメディアの影響が小さくなく、インターネットや現代のテクノロジーがなかったら、ここまでのムーブメントは起こりえなかったでしょう。これらの動きこそが「ニューパワー」という新たな力を得たことでなされたものだと思います。
つまり、旧来、力を持たなかった多数の人間たちがネットワークという横のつながりを用いることで、民主的かつ多元的な社会の実現を目指せるようになったのです。大衆を巻き込み、結集させることで生み出される力、それをニューパワーと考えてもいいでしょう。
一方で、「オールドパワー」とは、人々や組織が独占的に所有、あるいは制御しているものや知識によって成立しています。ゆえに、オールドパワーによって社会を動かすことができるのは、ほんの一握りの人間や組織です。20世紀の大手企業や政府などがそれにあたるでしょう。また、そのパワー構造は閉鎖的で、リーダー主導のトップダウン型であることも特徴です。
興味深いのは、最新のテクノロジーやメソッドを使っているからといって、必ずしもニューパワー型の組織ではないということです。私たちは「ニューパワー」と「オールドパワー」の対比に、「ビジネスモデル」と「価値観」を組み合わせて、組織を4象限に表していますが、たとえば、アップルは2つの軸においてオールドパワー企業といえます。
また、フェイスブックは、ビジネスモデルがニューパワーである一方、価値観はオールドパワーです。なぜなら、ユーザーとの接し方や情報共有、権力行使の仕方は一方的で、ユーザー側からの意思を受容できるような体制には十分になっていないからです。
ユニバーサルランゲージを使う
では、「ニューパワー」を手に入れた私たちはいま、どのように社会や企業を動かしていけばよいのでしょうか。実はそれには少しのコツがあります。
まず、ニューパワーの推進は、ビジネスやテクノロジー、ポリティクスなどさまざまな分野で展開されますが、一番大切なことは、誰にでも理解できる透明性の高い「ユニバーサルランゲージ(共通語)」を使用することです。それはつまり、インターネットの出現や、それによって起こりうる変化など、誰にでも当てはまるイシューであったり、人間の普遍的なことを共通語に組み込むということです。
また、ニューパワーを使って活動する際にも、非常に理論的な戦略を立てる必要があります。具体的には、その新しい力の動きに対して歯止めをかけようとするオールドパワーへの根回しが重要なのです。