5億円超の「ホンダジェット」が好調 成功の秘訣は翼上面のエンジン

ホンダジェット

今年のF1選手権で2勝を果たしてレース界を盛り上げているホンダは、ジェット機でも大躍進している。2019年上半期、「ホンダジェットは」小型ビジネスジェット機のカテゴリーで世界一のデリバリー数を記録。現在、65か国で130機以上が運用されている。その市場はアメリカ、日本、欧州と拡大し、いよいよ今月、中国民用航空局から型式証明を取得した。

さらに近い将来、ホンダは2輪のロードレース世界選手権500ccで5連覇達成のミック・ドゥーハン選手との強い関係を生かして、彼の母国オーストラリアにも導入する可能性もある。

しかし、ホンダジェットの道のりは長かった。2015年に生産開始こそしているが、実は30年以上の開発期間が必要だった。

1986年、東大卒で航空機開発の技術者の藤野道格が、25歳という若さで先進小型ビジネスジェット機の開発責任者に任命された。これはホンダ創業者の本田宗一郎が1991年に他界する前にゴーサインを出した最後のプロジェクトの1つだった。開発を牽引する米ミシシッピ州立大学大学研究所にも配属された藤野氏は、莫大な研究、計算、実験を重ね、1997年に同大学研究所のコンセプトスケッチを描いた。


藤野道格氏

同ジェットの最大の特徴は、業界でもユニークなエンジンの配置だ。エンジンを主翼上面に取り付けることによって、これまでにない広いキャビンと荷物室を確保し、エンジンから室内に伝達される騒音や振動の低減に成功した。つまり、このデザインで、同飛行機はビジネスジェット機のカテゴリーで最も静粛性に優れたジェットになっているということだ。

また、翼とエンジン、ノーズのデザインおかげで、空力抵抗が大幅に低減し、燃費も業界のトップクラスにある。「ホンダジェットのスリークで美しいノーズの形は、実を言うとハワイの免税店で見たサルヴァトーレ・フェラガモのハイヒールのデザインにインスパイアされました」と藤野氏は言う。



アメリカでは「主翼上面エンジン」があまりにも高く評価されたので、開発者の藤野氏は少なくとも7つ以上のアワードを受賞している。2012年に米国航空宇宙学会よりエアクラフト・デザイン・アワードを受賞し、2014年には学術団体「SAEインターナショナル」より「ケリー・ジョンソン賞」を獲得した。
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文=ピーター・ライオン

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