VRの次は? リアルとバーチャルを融合させることが可能な「XR」の可能性

エンハンス代表 水口哲也


武田:実際にハワイでなくても、映像や音で共感覚を得られれば、ハワイにいるのと同じようにリラックスし、心が落ち着きます。月面で地球を見ながら話し合うこともできますね。あとは、スタートアップ時のオフィスを背景に「あの頃」の意識を感じながら、ミーティングすることも可能になるのですね。

水口:空間をスキャンしたデータがあれば、どんな場所も再現できます。こういうことを話すと、人との関係が希薄になるなど、悲観的な未来を想像する人がいますが、意外と現実はポジティブだと思います。

武田:人間はこれまでも、テクノロジーを有益に使ってきた歴史があります。とはいえ、今の常識で考えると、人が空間や時間の制約から自由になる未来を、実感を持って想像できる人は少ないような感もあります。

水口:現実的に、制約から外れるのは、遠い未来ではないのです。今、テクノロジーの進化に伴う解像度は、ムーアの法則(※)からも外れ、指数関数的 に上がってきています。ここで人間の肉体機能に注目してみましょう。私たち人間の目は片目8K以上になると、それ以上の解像度を判別できなくなってきます。8K以上で3Dになると、現実の光景と仮想映像の違いは、ほとんど判別がつかなくなるでしょう。

武田:脳のレギュレーション(規定)が、テクノロジーに追い付かなくなるのですね。

水口:そうとも言えますね。私は、XRの未来においては、ゲーム「以外」のことを中心に考えています。今から50年前にゲームから始まった「体験」のメディアは、今後あらゆる方面に拡散して、いろいろなものと融合して、新しい「体験」の時代を構成していくことになると思います。



XR時代の準備期間としてのVR

武田:水口さんは、常に「体験」に焦点を当てています。

水口:「体験」というものは、人の多くの幸せに深く関わっているからです。テクノロジーがストレスを減らし、制約やタスクから解放し、必須事項が多すぎる世界や、物欲から解放されて、個人が自分のペースで暮らしていける。余剰な時間で、自分の好きなことができると、人は幸せを感じると思うのです。

武田:テクノロジーの進化が、人と人との出会いも変えるようにも感じました。

水口:SNSが人間の行動や振る舞いを変えたように、XRもまた、人間の行動を変えるはずです。人間の欲望や本質は変わらなくても、実現の方法をより拡張(Extend)していくと考えています。

武田:拡張していく現実では、ネガティブ・ポジティブにかかわらず、様々な側面が変わるでしょう。それは、使い方次第という要素も強く、よりリテラシーが求められる社会になるのかもしれません。
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文=武田隆

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