VRの次は? リアルとバーチャルを融合させることが可能な「XR」の可能性

エンハンス代表 水口哲也




情報化からの脱却で強くなるインタラクティブな共感覚

武田:『Tetris Effect』もすごいゲームです。遊び慣れた単純なゲームなのに世界観が全く違う。

水口:ひとつ武田さんに質問していいですか?『Tetris Effect』の体験を言葉にしてみてくれますか?

武田:初めての世界、ああいう世界の中に入ったことがないし、とにかく包まれちゃう。絵が変わったり、音が変わったりするんですが、そんな単純なことではなく、空間と時空間が変わっていく感じです。イルカ、馬、学校、気球……記憶の中でテトリスをして、見たい景色があっても、よそ見をするとゲームが終わるという…。

水口: 先日、ラジオ「オールナイト・ニッポン」でオードリーの若林正恭さんが、相方の春日俊彰さんに『Tetris® Effect』の説明をしてたのを聴いたんですが、まさにそんな感じだったんですよね。若林さんが一生懸命説明すればするほど、春日さんがわからなくなっていくんです。最終的に若林さんは「テトリスしながら、クジラといっしょに、そこにいたんだよ、俺!」と言い、「さっぱりわかんねーよ」と春日さんに突っ込まれるという。そのやり取りが、すごく面白かった。

武田:そのやり取り、すごくよくわかります。 私もあの感動を言葉にできなくてもどかしい。ゲームと映像の融合は初めての体験でした。美しい映像を見たいけれど、見られないという「もどかしさ」は発明ですよね。

水口:その見たくてもずっと見続けられない「もどかしさ」がいいんです。

武田:すばらしい体験は総じて言葉にするのが難しい。これは水口さんがずっとおっしゃっていることでもありますね。

水口:これからは「体験」の時代が始まるんだと思うんですね。20世紀はどちらかというと、「情報」の時代だった。これからは情報が束になって、体験になる。VRはその入り口みたいなものです。

武田:その先にあるのは、「AR」(Augmented Reality・拡張現実)、「MR」(Mixed Reality・複合現実)、「SR」(Substitutional Reality・代替現実)などでしょうか。これらの技術革新は目覚ましいものがあります。

水口:最近、それらを合わせて「XR」(Extended Reality)と呼ぶようになってきています。XRは、リアルとバーチャルを融合させて新しい体験を提供することが可能です。

武田:拡張的な現実世界と、現実が融合した体験ができるようになるのですか?

水口:そうですね。現実と創造的な世界を融合させることで、新しいイマジネーションの世界が始まるでしょうね。体験のシェアや共有も起こってきます。

武田:5Gがいよいよ始まり、転送可能なデータの解像度の制約も外れていきます。XRが導く未来の世界はどんなものなのでしょうか?

水口:人間が空間や時間の制約から解放され、自由になっていく世界だと考えています。例えば、遠く離れた場所にいても、専用のデバイスを装着すると体験が共有できるとか、時間を超えて体験を共有できるとか。

武田:共感覚性が加速するともいえますよね。

水口:そうです。今までは文字やビジュアルに置き換えて伝えてきたことが、これからは共感覚的な体験として、ダイレクトにシェアできるようになるでしょう。

武田:つまり、「体験」の送受信、「体験」のパブリッシングが行われる世界ということですか?

水口:21世紀は、それが当たり前になる時代だと思います。20世紀は、「情報」。21世紀は、「体験」。送受信するデータの量が増えるから、自然とそうなる。バラバラだった情報が、束になって体験として統合される、という言い方もできます。いずれにしても、人類が踏み込んだことがない領域に行くでしょう。もちろん、テクノロジーの進化にはポジティブな面もネガティブな面もあります。悲観的な未来は嫌だから、ポジティブな未来の体験を作らなきゃ、ですね。


Tetris Effect
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文=武田隆

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