紳士淑女の所作を生む ボルサリーノのパナマハット

ボルサリーノのパナマハット


森岡:ボルサリーノのフェルトハットはまさに名品です。でも今回紹介したいのは夏向きのパナマハット。この出来栄えもソフトハットと同じくらい素晴らしいと思います。

小暮:トキヤ草(パナマ草)の葉を細かく裂き手で編んでつくられる盛夏用の帽子。パナマ運河で働いていた人がよくこの種の帽子を被っていて、それをヨーロッパの人が持ち帰って被ったので「パナマハット」と命名されたそうです。

森岡:涼やかな帽子で、昔から紳士がよく被っていた帽子ですよね。リネンを使ったジャケットなどにこの自然な色合いが似合います。いまの時代ならばTシャツに合わせてもいいくらい。数年前から、このパナマハットは女性の間で大流行しています。女性はカジュアルなスタイルにも被っていますね。それを見て欲しくなる男性も増えているような気もします。

小暮:カンペリオ氏も世界的に見ても女性の愛用者の比率が高まっていると。コレクションも女性向けを増やしたいと語っていました。

森岡:パナマハットはその形、その佇まいから考えてある程度年を重ねた大人の人に挑戦してほしいアイテムのひとつだと思います。もちろんファッション関係の人はすでに愛用し始めていると思いますが、普通の紳士淑女にもっともっと被ってもらいたいですね。

小暮:戦前は、日本の紳士たちは必ずハットを着用していました。そして例えば人と会ったとき、帽子を脱いで挨拶をするとか、家に入ったときには帽子を脱いでいました。そういうハットの被り方、脱ぎ方自体が紳士らしさを感じさせるものでした。

森岡:紳士淑女の所作に必要な役割をハットが担っていたということでしょうね。靴ではないですが、帽子で着こなし、所作を仕上げると考えてもいいほど重要なアクセサリー。帽子=ハットをもっとうまく活用してほしいですね。

小暮:森岡さんもこの夏、帽子を被るときにはパナマハットにぜひ挑戦してみてください。



森岡弘◎『メンズクラブ』にてファッションエディターの修業を積んだ後、1996年に独立。株式会社グローブを設立し、広告、雑誌、タレント、文化人、政治家、実業家などのスタイリングを行う。ファッションを中心に活躍の場を広げ、現在に至る。

小暮昌弘◎1957年生まれ。埼玉県出身。法政大学卒業。82年、株式会社婦人画報社(現ハースト婦人画報社)に入社。83年から『メンズクラブ』編集部へ。2006年から07年まで『メンズクラブ』編集長。09年よりフリーランスの編集者に。

photograph by Masahiro Okamura | text by Masahiro Kogure fashion direction by Hiroshi Morioka | illustration by Bernd Schifferdecker | edit by Akio Takashiro

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