「違和感」こそが、新しいチャンスを連れてくる|別所哲也 #30UNDER30

俳優 別所哲也


「嫌い」から広がる新たな可能性

UNDER30のみなさんに私が提案したいのは、先入観や違和感のあることにこそ、時間を費やしてみてほしいということ。ついつい好きなことばかりに打ち込みがちになるものですが、10個のうち1つや2つは、あえてそうでないものに触れてみることが、若いときには特に大切だと思います。

ハリウッドの撮影現場で周りから言われたのは、「好きな映画を100回観なさい」ということでした。自分がなぜその作品を好きなのか、どのポイントが好きなのかを分析してみろというのです。

それと同時に、「自分と関係がない、興味がないと感じる映画も100本観ろ」とも言われました。なぜ自分はその作品を苦手だと思ったのか、違和感の正体は何なのか。それらと向き合うことで自分を知るヒントになるし、単純にそれまで味わったことのない新鮮な面白さと出会えるかもしれないからです。

私にとっての食わず嫌いは、ショートフィルムでした。すでに長編映画に出演していた自分にとって、短編映画は見劣りするものなのではないか、そんな先入観を持っていたのです。ですが、実際に観てみると、そこには新しい発見や出会い、味わったことのない刺激がありました。こうした出会いをきっかけに、いまも続くショートショートフィルムフェスティバルを主宰することになり、私の世界は大きく広がったのです。

だから、「好き」を極めるのと同時に、反対の感情をもつモノやことに関しても、実際に自分で体験してほしい。自分の可能性や向き不向きを決めつけず、視点を広げる経験をどんどんしてみてほしいですね。


べっしょ・てつや◎俳優。慶應義塾大学法学部卒。大学時代に英語劇と出合い、1990年、日米合作映画『クライシス2050』でハリウッドデビュー。映画やドラマ、舞台作品など多くの作品に出演するほか、ラジオパーソナリティ、バラエティ番組などでも活躍中。米国映画俳優組合(SAG)メンバー。国際短編映画祭「ショートショート フィルムフェスティバル」を主宰。

別所哲也が「アート部門」のアドバイザリーボードとして参加した「30 UNDER 30 JAPAN 2019」の受賞者は、8月23日に特設サイト上で発表。世界を変える30歳未満30人の日本人のインタビューを随時公開する。

昨年受賞者、「スーパーオーガニズム」でボーカルをつとめる野口オロノや、昨年7月にヤフーへの連結子会社化を発表した、レシビ動画「クラシル」を運営するdelyの代表取締役・堀江裕介に続くのは誰だ──。

文=松崎美和子 写真=帆足宗洋

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