同社のCEOであり、ソフトバンクの孫正義氏の誘いに応じて「Pepper」のプロジェクトにも携わった林要氏に、起業家としての心得やチームマネジメントの極意についてドリームインキュベータの小縣拓馬が聞いた。(全6話)
「Pepper」を生み出した多彩な人材のマネジメント法
──林さんが関わった「Pepper」は成功事例としてロボットの新常識を切り開いたように思います。Pepperを生み出すことができた要因はどこにあるとお考えでしょうか?
「Pepper」の時に良かったと思ったことは、多種多様な人達をチームに入れたということです。多彩な人達を入れるのは普通はマネジメントしづらいので、嫌われますよね。でもあえて、計画的に多彩なメンバーにしたんです。おかげで、メンバーの中から予想だにしないような議論やアウトプットが出てくるようになりました。
──仲間集めに基準は設けなかったんでしょうか?
「多彩な人達」といったって、誰でもかれでも適当に集めればいい訳じゃありません。トライ&エラーしている間に、「コンセプトに共感している」「各分野での一流である」「コミュニケーションが出来る」の3つの要素が揃っているメンバーが残りました。
メンバーの中に、この3つの要素のうち1つでも欠落している人がいると、多彩な人達を集めたとしても、単なる主義主張のぶつかり合いに終始してしまいます。しかしながら3つとも揃っている人同士であれば、最後は何らかの結論が出るんです。お互い、相手の言っていることに刺激を受けて、さらにブラッシュアップされた意見を出してくれる。いわば自分の脳の中も外も使って考えを発展していく、というイメージです。
この多彩な人達のアイデアが集まって「Pepper」に繋がったように思います。
メンバーのパワーを引き出す「1.5か月PDCAサイクル」
もう一つ、意識的にやっていたのは「1.5か月PDCAサイクル」ですね。
「とにかく長期の計画を細かく立てすぎない。逆に、比較的短い期限でスケジュールを切る」ここで重要だったのは1.5か月というスパンと、管理し過ぎないということでした。
まず1.5か月というスパンであれば、メンバーが全力を出し切れる。長過ぎずちょうど良い。そして、実行の中身を管理し過ぎないことで、たとえ方針転換が起きたとしても柔軟に対応できる組織になった気がします。
例えば、「1.5ヶ月先に孫さんへのプレゼンをやるから、大体このぐらいやっておかないと満足して貰えないよね」という話をすると、皆それぞれ色んなことを自ら考えてやり出す。そして大きな方針転換があったとしても、ざっくりとしか計画が無いから、あまり動じない。