「瀬戸内国際芸術祭2019」で感じたアートと地域の可能性

作家:草間彌生 作品:No. na01 赤かぼちゃ 撮影:青地大輔

3年に1度、瀬戸内海の12の島と2つの港を舞台に開催される現代アートの祭典「瀬戸内国際芸術祭2019」が開かれています。

2019年は4月26日に開幕しました。私はもともとアートを専攻していたこと、それにアートを活用した地域活性化の取り組みに共感する点が多くあることから、「瀬戸内国際芸術祭」はもちろん瀬戸内海の島々にも毎年のように足を運んでいます。
 
「海の復権」をテーマに掲げ、美しい自然と人間が交わり響き合ってきた瀬戸内の島々に活力を取り戻すことをテーマとして開催される「瀬戸内国際芸術祭2019」。ここで垣間見た、アートと地域の可能性について書きたいと思います。
 

作家:EAT&ART TARO 作品:No. mg16瀬戸内ガストロノミー 撮影:Keizo Kioku

私は今回、食と体験をテーマとして訪問しました。

最初に訪問したのは、女木島。女木島は、高松港からフェリーで約20分のところにあり、島の中央部にある鷲ヶ峰山頂には巨大な洞窟があります。その昔、鬼が住んでいたと伝えられていることから、別名「鬼ヶ島」とも呼ばれています。

ここでは、その土地の食文化にまつわる背景などを学びながらコース料理を楽しむ瀬戸内ガストロノミーを堪能しました。女木島の食材である「タコ」を活かした料理などについて丁寧な説明を受けながらコース料理をいただくという趣向です。店舗運営を考えると1つの皿に複数の料理がのっている1プレート料理の方が効率的ですが、1品ごとに料理の説明と女木島の食文化にまつわる話を聞きながら食事を楽しむ体験は、とても素晴らしいものでした。
 
ビジネスの仕組みを芸術に組み込む
 
私が瀬戸内国際芸術祭に注目している理由は、2010年の開始時からビジネスの基本に忠実な運営をされていて、持続可能なモデルになっているためです。

全国各地でさまざまな芸術祭が開催されていますが、いずれも収支は芳しくなく、持続性を目指したモデルになっていません。
 
瀬戸内国際芸術祭は、顧客視点に立ってサービスを提供しており、その対価として3シーズン作品鑑賞パスポート費用(4800円)を得ています。関係者に聞いたところ、収支は毎月厳密に精査されているとのことでした。企業では当たり前ですが、行政(香川県)が主催するこうした事業で、黒字経営を続けているのは、持続性を目指した地域づくりにおいて重要なことだと思います。
 

作家:眞壁陸二 作品:「男木島 路地壁画プロジェクト wallalley」 撮影:Osamu Nakamura
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文=齋藤潤一

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