地方発イノベーションの秘訣


更地であったポートアイランドに、理化学研究所、神戸市立医療センター中央市民病院といった研究機関や病院群、それに引き寄せられるように国内外の民間企業が次々と進出。いまや359社・団体が集まり、1万1千人が働く日本最大のライフサイエンスの街に成長した。

100%コピーのプログラムから脱皮

これまでの500 KOBEは、シリコンバレーで行なってきたものを完全コピーしたプログラムだった。米国での完成品をそのまま日本に持ち込むのが成功への近道と考えていたからである。

今年の3月、神戸市がヘルスケアに振りたいと相談すると、500 Startupsの幹部は難色を示した。500 KOBEは、3年目の2018年、237社のエントリーがあった。しかも、海外からが134社と過半数を超え、国際的なステイタスも確保している。これをモデルチェンジするのは、リスクが大きすぎるからだ。

6月5日、神戸市の医療産業都市部長である三重野雅文がサンフランシスコの500 Startups本部を訪れ、神戸が持つポテンシャルを説明。翌月、500 Startupsは、大きなシナジーがあると判断し、神戸市の考えを受け入れた。



500 Startupsの最高経営責任者であるクリスティン・ツァイはモデルチェンジする理由を、「神戸医療産業都市の病院や民間企業にスタートアップが接点を持てる。ヘルステックのスタートアップが集まると神戸でイノベーション創出につながる」とコメントした。

そのような経緯で、今年の500 KOBEは、デジタル技術を活用した診断・治療支援、病院等の業務改善、健康増進、介護支援などが対象となる。

この領域で新ビジネスを始めるには、医療や介護の現場で実際に使えるのかを試すことが不可欠である。だが、グローバルな医療機器メーカーや製薬企業と異なり、零細なスタートアップは、現場へのコネがない。500 KOBEをきっかけに、神戸の病院や研究機関といった現場フィールドが利用でき、専門分野の研究者と話ができるのは、大きな魅力となる。

今回の500 KOBEに選ばれたスタートアップは、医療産業都市に立地する病院、研究機関、民間企業の施設への視察や交流はもちろん、神戸市民を対象にしたアンケートやモニター試験も活用できることになる。さらには、来年完成する新たなイノベーション拠点「クリエイティブラボ神戸」への入居優遇策も検討されている。

阪神・淡路大震災から20年をかけて培ってきた、ライフサイエンス領域の多彩なリソースが、新しいデジタル時代のイノベーションに活かされるときがついに訪れる。

連載:地方発イノベーションの秘訣
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文=多名部重則

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