燃え尽き症候群が診断可能な症状として世界保健機関(WHO)により世界規模で認められるようになった今、多忙さを成功の証とする考え方は時代遅れになりつつある。
それでも、この考え方はいまだに広まっている。忙しさを維持するためには、ストレスや居心地の悪さを生む感情はすべて脇へと押しやらなければいけない。
感情はプライベートだけではない
「感情」とは、個人的な空間や人間関係、セラピー室の中にとどめておくもののように思える。しかし、感情を表現しなければ心臓病や自己免疫疾患、記憶の問題や不安、うつ病のリスクが高まる恐れがある。
『The Desire Map(願望の地図)』シリーズを執筆したベストセラー作家ダニエル・ラポートは、こうした感情遮断の理由のひとつに、私たちがプライベートと仕事で自分を分けようとしていることがあると指摘している。
この緊張状態により、人は仕事の場面では良いパフォーマンスを見せる必要があると信じて多忙のサイクルに陥り、“プライベート”な自分を燃え尽くしてしまう。しかし、仕事とプライベートの分離は無益だ。
私は先日、ロンドンでの講演会を控えたラポートに話を聞いた。ラポートは、自分のイベント後にはいつも、驚くほど多くの人から仕事上の悩みを誰にも言えないと感じているという話を聞くのだという。
この「感情」に関する側面は、ビジネスシーンではほぼ見えないように隠されている。ラポートは、人々が自分の生活をコントロールしようと必死になり、異なる場所では異なる形で対処する必要があると考えてしまうことが、苦しみの一因となっていると述べている。
しかしこうした人々は、「真の力は流れの中にある」ことに気付いていない。
心に従うことで生産性が高まる
心に従うことを勧めているのはラポートだけでない。流れと心に従うことには、血圧の低下や不安やうつ症状の緩和というメリットがあることが科学的に示されている。また、心に従い感情を表現する習慣により、生産性とパフォーマンスも高まる。
会社で心や感情について話すことは、指標や目標、成果改善といった“ビジネス語”と対立するように感じるかもしれない。だが、世界で最も大きな成功を収める人々は、最高のパフォーマンス達成のため、自分の感情を特定する習慣を持っていると話している。世界的なパフォーマンス向上コーチのブレンドン・バーチャードは『High Performance Habits(高いパフォーマンスを生む習慣)』で、一貫した持続的な成果を生む中核的習慣としてこれを挙げている。