「宇宙戦争」が現実になる脅威、米仏が人工衛星の武装化へ

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昨年9月、ロシアの人工衛星「Luch-Olymp」がフランスの軍事衛星「Athena-Fidus」に異常接近し、フランス政府はロシアがスパイ行為を試みたとして非難した。「ロシアの衛星が極度に接近し、通信の傍受を試みたようだ。隣人の通信を傍受することは非友好的であるだけでなく、スパイ行為とみなすことができる」と、フランスのフロランス・パルリ国防相は述べた。

パルリは先日、新たな「宇宙防衛戦略」をリヨン=モン・ヴェルダン空軍基地で発表した。「宇宙防衛の強化は非常に重要だ。我々が宇宙にアクセスし、行動を起こす自由が危険にさらされている」と彼女は話した。

パルリは、カメラや機関銃、レーザーを搭載し、脅威を検知して反撃することができる人工衛星について説明した。「パルリの説明内容は、サブマシンガンやレーザーで敵の人工衛星のソーラーパネルを破壊すれば実現可能だ」とル・ポワン紙は記事で指摘した。

パルリはまた、戦略的重要性が高い衛星が敵に破壊された場合に短期間で差し替えることができよう、数多くの低軌道衛星を配備する予定だとしている。

この構想には、フランスの航空宇宙関連企業大手である「アリアングループ」、「エアバス」、「タレス」による追加のサービスが含まれている。パルリは、2025年までの宇宙軍事予算である43億ユーロ(約5118億円)に、さらに7億ユーロ(約833億円)を追加することを明らかにした。

フランスをはじめ各国では、宇宙における交戦規則が大きく変わろうとしている。フランス政府は、こうした動きが防衛目的であると説明している。他国の宇宙資産への攻撃は現在違法とされている。

7月に、エマニュエル・マクロン大統領は、空軍の権限を拡大した宇宙軍司令部の創設を発表した。「新たな軍事宇宙ドクトリンは、宇宙兵器を用いた宇宙空間における防衛を保証するものだ」とマクロンは述べている。

トランプの「宇宙軍」創設に対抗

フランスによる宇宙軍司令部創設は、トランプ米大統領が昨年後半に提唱した宇宙軍創設の動きに対応するものだ。宇宙はもはや新たなフロンティアではなく、戦場での通信や監視システムを強化する上で重要な場となっている。近年、中国やロシアがサイバー攻撃をはじめ、宇宙での攻撃能力を強化しており、アメリカやその同盟国は劣勢を強いられている。
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編集=上田裕資

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