夫妻はこれまでにも、顧客情報管理(CRM)最大手のセールスフォースが拠点を置くベイエリアの施設・団体や、地元が抱える問題の解決を目指した取り組みに多額の資金を提供してきた。
新たに寄付することを発表した3500万ドルのうち、2500万ドルはカリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)に贈られる。同大学と夫妻は「UCSF Benioff Center for Microbiome Medicine(UCSFベニオフ・センター・フォー・マイクバイオーム・メディシン)」を創設。ヒトのマイクロバイオーム(微生物叢)の研究を推進する。
同センターが目指すのは主に、小児期発症疾患の予防法とぜんそくや肥満、炎症性腸疾患(IBD)などの治療法の確立だ。また、1000万ドルはスタンフォード大学の「Stanford Microbiome Therapies Initiative(スタンフォード・マイクロバイオーム・セラピーズ・イニシアチブ)」に寄付される。
ヒトマイクロバイオーム(人体にすみつく数百兆個にも上る細菌)は、新たな研究分野として注目を集めている。微生物叢はIBDや肥満のほか、セリアック病、結腸がん、自閉症などの発症に関連しているとみられている。
こうした研究に資金を提供しているハイテク企業のトップは、ベニオフだけではない。フェイスブックのマーク・ザッカーバーグCEOと妻のプリシラ・チャンが設立した慈善団体、チャン・ザッカーバーグ・イニシアチブもまた、ヒトの細胞に関する研究への寄付を行っている。
「筆頭」慈善活動家
セールスフォースのCEOであるベニオフの資産は、フォーブスの調査では約66億ドル。サンフランシスコの非公式な「筆頭慈善活動家」として知られる。
これまでにUCSFに寄付した金額は2億ドル。そのうち3000万ドルは、今年5月に公表した「Benioff Homelessness and Housing Initiative(ベニオフ・ホームレスネス・アンド・ハウジング・イニシアチブ)」の創設に充てられたものだ。同イニシアチブは、サンフランシスコのホームレス問題の根本的な原因を明らかにし、解決につなげるために必要な研究を行う。
また、ベニオフは昨年、ホームレス対策を目的にサンフランシスコに拠点を置く大企業への課税強化を求めた(住民提出による)条例案、「提案C」を支持する活動に790万ドルを拠出。さらに、市長から直接、ホームレスの人たちが一時的に滞在できる施設を用意するための支援を求められ、610万ドルを提供した。