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スウェーデン移住エンジニアのライフ&ワーク


私のような資格不要の専門職が、労働許可を得るのに最も現実的であるのだが、まずは自身の職種がどれだけ言葉に依存している職業なのかを、客観的に抑えることがポイントとなるだろう。

もし英語に自信がないのであれば、あらかじめ移住先候補を決めてしまい、その国の公用語をゼロから学んだほうが労働許可への近道となる場合もある。応募した会社と初めてSkype面接をするときに、相手の国の言葉で挨拶や志望動機を語れば、その社会へコミットしている度合いも伝わる。

スウェーデンやドイツで、英語のみで生きていくのは不可能ではないが、現地の言語を話さないと「腰掛の人」と思われ、「すぐにいなくなるかもしれない」という不安を抱かせる側面もあることは留意しておくべきだ。

文化理解度:契約の考え方が違う

4つのファクターで最も重要なのが、実は、文化理解度だ。言葉は話せても、相手国の文化を理解していないと先方は一緒に働きたいと思ってくれない。例えば、自動車業界の開発において設計変更というのは度々行われるものだが、この設計変更に対しての捉え方が日本とスウェーデンやドイツとでは大きく異なる。

少し具体的に紹介しよう。

欧州の完成車メーカーが市場トラブルとして、ある金属部品が壊れ、車両が制御不能に陥り大事故につながる問題を抱えていたとする。そして完成車メーカーは早急に強度を向上させた対策案を練り、巨額の費用が発生するリコールをするかしないかの判断に迫られる。リコールを届け出た場合は、直ちにユーザーへの処置を開始しなければならない。つまりはその対象部品を生産している部品メーカーは予め代替部品の在庫をそれなりに抱える必要がある。

いよいよ明日、リコールの届け出をする土壇場の段階で、完成車メーカーから部品メーカーに「ソフトウェアの制御で問題を解決ができることがわかった。リコールには変わらないが代替部品は不要となった」という連絡が入ったとする。ここで欧州と日本の部品メーカーとで大きく見解が分かれる。

日本は、「これだけ努力をしてきたのにやっぱり不要となったでは済まない。これはお金の話ではない。今後の信頼関係にもヒビが入るので、どういうことなのかご説明をいただきたい。再発防止策も考えていただきたい」という具合。

欧州は、「それは良かった。ソフトでの対応であればユーザーが車を預けるのも短時間で済むし、部品交換工賃もかからないし御社にとって最善の選択でしょう。ですが、今回の一連の人件費と在庫については別途補償という形で請求書を送付します」となる。



こうした重要な決断を、欧州の人たちは割と気軽に、しかも良いニュースとして知らせてくる。しかし日本の商習慣であれば、完成車メーカーのそれなりの立場の人間が取引先に出向き、「説明」という名の謝罪をし、「色々ありましたが今後ともよろしくお願いします」となって丸く収まる。

私がこれまでのキャリアで感じてきたのは、上記のように日本人はとくに付き合い、面子を気にして、精神論へと論点がズレていく。欧州はいわゆる契約文化であり、土壇場でキャンセルが発生した場合も、説明や謝罪を求めたところで金にならないので、契約に則り淡々と補償の手続きを進めていくのだ。

これはほんの一例であるが、欧州で働くとなると、このようなカルチャーショックに毎日のように出くわす。こんなことでいちいちストレスを抱えていたら、海外生活などやっていけないだろう。どちらが良い、悪いという話ではなく、こういった文化の違いを理解し、不測の事態に直面した際に、きちんと振舞えることは言葉以上に大切なのである。

文=吉澤智哉

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