国際航空運送協会(IATA)も、2016年に38億人だった旅客人口が、2035年には72億人となり、20年で倍になると予想を立てている。また、この20年間で、ボーイング社だけでも3万9000機の旅客機の発注を受けており、これは単純平均でも年に約2000機、毎週40機もつくる計算で、明らかに旅客の急増を受けての数字の伸長だ。
確かに、アメリカで見ても、メジャーな空港はなんらかの拡張工事をしていて、離発着数は毎年増加している。そして、この拡張にのっかる形で、リアル店舗の空港進出が激化している。
街中の路面店の売り上げが、アマゾンなどのeコマースに浸食されるなかで、ブランド品のリアル店舗は、拡張される空港に活路を見出している。なかには、街では買えない品揃えが空港店舗には並んでおり、いまやショッピングモールよりも空港モールのほうがトレンドだと、ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は報じている。
空港の売上を伸ばしたエスティローダー
例えば、ロサンゼルス空港のトム・ブラッドレー国際線ターミナルは、5年前に「ウエスト」と呼ばれる新たなターミナルを完成させたが、クロエ、バーバリー、コーチ、フレッド シーガル、エンポリオ・アルマーニなどブランド店舗が数多く入っている。現在もさらに拡張が行われており、さらに増える予定だ。
デルタ、ユナイテッド、アメリカンなどの自国のキャリアは、これまではファーストフードと雑貨土産店程度しかない独自ターミナルに国際線も国内線もまとめていたのに、最近では、国際線をトム・ブラッドレーに移したため、ますますこちらのリアル店舗は繁盛しているという状況だ。
ブランド品店にとっては、これまで高級百貨店や高級住宅地近郊のショッピングモールでの売上が主要な収入だったが、エスティローダーは去年初めて、全米の百貨店売上より、世界の空港店舗での売上が勝ったともWSJは伝えている。
エスティローダーの空港店舗展開の責任者であるオリビエ・ボットリー氏によれば、「顧客入場数がこれほど毎日確保されている場所は他にない」と空港店舗の魅力を絶賛している。搭乗待ち時間の平均時間は72分ということで、この時間をただ座って待っている人は少なく、なんらかのサービスを求めて歩き回っている。業界の人間はこの72分を「ゴールデンタイム」と呼んでいるのだそうだ。