電動キックボードのシェア、環境に「優しくない」側面も

ベルリン・ブランデンブルク門前のレンタル電動キックボード(Photo by Sean Gallup/Getty Images)

電動キックボード(スクーター)のシェアサービスは、ここ1年ほどの間に世界中の都市に広がっている。利用者たちは自分の携帯電話を使って電動キックボードを借り、どこでも好きな場所で返却することができる。

ただ、こうしたサービスは論争の的にもなっている。数多くの負傷者に加え死者まで出している、歩道をふさぐ新たな「都市ゴミ」になっている、と批判する人たちもいる。

こうした中、電動キックボードのシェアサービスに対する新たな批判にもつながる調査結果が発表された。同サービスの主なセールスポイントの一つである「環境に優しい」との主張に疑問を呈する内容となっている。

米ノースカロライナ州立大学の研究チームは、電動キックボードのライフサイクル全体(製造から廃棄まで)に関する調査を行った。その最も重要な点は、回収・充電を繰り返さなければならないという炭素集約型のプロセスに着目したことだ。

調査の結果、充電を行うドックステーションを設けていないシェアサービスに使われる電動キックボードは大抵の場合、走行距離およそ1.6km当たりの温室効果ガスの排出量がディーゼルエンジンのバス、電動モペット(原動機付き自転車)などを上回ることが分かった。

研究チームによれば、この調査を行うきっかけになったのは、シェアサービスを提供する米Lime(ライム)のキックボードの車体に貼られている「カーボンフリーで走行」と書かれたステッカーだった。

電動キックボードは製造と回収・再充電の過程においてほぼ半量ずつ、温室効果ガスを排出している。また、製造プロセスは資源集約型だが、製品寿命は短くなる傾向がある。故障して廃棄されるものもあり、川や運河に投げ込まれていたケースも報告されている。

その他、電動キックボードの走行距離は一般的に短く、タクシーの利用に代わる場合はあるが、個人が運転する自動車での移動に取って代わるものではない。

奨励される対応策

研究チームはシェアサービスを提供する各社に対し、以下の実行を勧めている。

・提供する電動キックボードの回収には電気自動車(EV)を使用し、充電が完全に切れて動かないキックボードのみ回収する
・回収する範囲を保管場所の近くに限定する
・排出量を削減するため、より多くのリサイクル素材を使用して生産する
・ユーザーにとっての利便性は明らかに低下するが、充電を行うドックステーションを設け、そこに返却してもらうことで排出量を大幅に削減する

現状では、シェアサービスに利用される電動キックボードの温室効果ガス排出量は、走行可能な期間(寿命)のうちの65%において、公共交通機関や電動モペットを上回っている。だが、排出量の削減に向けて上記の変更を実施すれば、この割合は35~50%に引き下げることができると見込まれている。

編集=木内涼子

ForbesBrandVoice

人気記事