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「インパクト・アントレプレナー」──社会性(ソーシャル)と事業性(プロフィット)を高度に両立させている新しい起業家たちが生まれている。起業家支援のNPO法人、ETIC.代表理事の宮城治男は、彼らが「次のスタンダード」になると話す。


「いまの若い起業家たちは、事業を通して社会的な価値観を実現することが『当たり前』と考えています。これは一過性のブームではなく、次のスタンダードになります」

そう話すのは、起業家支援のNPO法人ETIC.代表理事の宮城治男。宮城は、ETIC.を1993年に設立し、これまでに輩出した起業家数1270人(学生向けプログラムのOBOG起業家数234人)にのぼる。変革・創造の現場への参画者も約7600人、年間のプログラム・エントリー数は約1万6000人(2017年)というインパクトを出している。

宮城が93年、学生時代に始めたのは「起業家」という選択肢を伝えること。97年からは長期インターンシップを事業化し、台頭を始めたITベンチャーのスタートアップを支える学生を供給、そこからさらに次々に起業家が生まれた。99年よりビットバレーアソシエーションの事務局長を務め、渋谷ビットバレー構想の仕掛け人の一人となった。その後、2001年からは「社会起業家」支援に舵を切り、日本発のソーシャルベンチャーのコンペティションを開催。15年には学生起業家を育てる現代版私塾 「MAKERS UNIVERSITY」を設立、高校生向けの「MAKERS UNIVERSITY U-18」も開始。16年からは全国先進自治体の広域連携や民間連携による「ローカルベンチャー協議会」を立ちあげ、地域での起業を促進する。この四半世紀に起きた日本の起業家の潮流は、まさにETIC.の進化の歴史と重なる。

「私たちにとって、ITベンチャー企業への支援も社会起業家の支援も根っこの部分ではつながっています。それは、『つくりたい社会を実現するために事業やプロジェクトを立ち上げる人を応援する。自分たちのミッションに向き合い、自分たちの価値観に忠実に生きることを応援する』こと。社会を変えることを事業にして挑む生き方は、93年当時誰も描けなかった。それが今ETIC.に来ている高校生大学生にとっては当たり前の選択となってきています。お金や人の流れも大きく変わろうとしている。テクノロジーの進化も重なり、社会を良くしたいという志をたて、正面からそこに向きあう生き方こそが、社会性もビジネス性も同時に満たしてくれる、まさに『インパクト・アントレプレナー』の時代が到来しようとしている」(宮城)

それでも「経済規模が小さい」「売上規模が小さい」「雇用が少ない」という批判が出てくることに対して、宮城は次のように話す。

「社会のあるべき姿を前線でつくり出しているのが社会起業家であり、インパクト・アントレプレナー。誰もやらなかった領域で、かつ、市場がない領域で、彼・彼女らが切り開いてきたことが、例えば政策になって広く『面展開』する可能性もある。我々が支援する地方創生の現場や福祉の現場ですでにそうした動きが起きている。少数の向こう見ずな突破者が、ソーシャルインパクトにレバレッジをかけ、社会を巻き込んで、あるべき未来がつくられていくのだと思います」

文=フォーブスジャパン編集部

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