ビジネス

2019.08.13 15:00

コスト削減型ではなく、「人間の魂の受け皿」になるロボットをつくりたい|GROOVE X 林 要




おにぎりが生む、スタッフ同士の心の繋がり

──そんな全く新しいロボットの開発に携わっている社員の方は、どのような方が多いのでしょうか?

弊社にはフリーで活躍できるレベルのスキルを持ったスタッフが多いと思っています。

そういう人達って自分の得意分野では周囲に並ぶ人のいないエキスパートだったりするので、前職では頼られていても、知的好奇心が満たされていなかった人が多いんですよ。ずっと皆から頼られる役割、みたいな。で、知的好奇心を求めて来てくれてはいるのですが、「前職と同じような感じなのかも」と最初は弊社にも期待しきれない面があるわけです。そんな時に何気なく「新しくこういうのを使ってみようと思ってます」とSlack(コミュニケーションツール)に投げると「それはこんな課題がありますよ」と他領域の人から予想もしなかった球が返ってくる。

結果として「色んな人がいて面白いですね、いい会社ですね」と言ってもらえる。それが一番嬉しいです。そういう多彩な人達が自律的に役割分担できる組織であれば、それ自体が参入障壁になると思うんです。

──多彩なメンバーの方向づけやモチベーション維持はベンチャー共通の課題だと思います。どのように工夫されているのでしょうか?

海外では「エンプロイーエクスペリエンス(従業員の経験価値)」と呼ばれて注目されていますが、弊社でも社員の従業員体験は非常に重視しています。実際、社内に「社内文化育成大臣」のような役割の社員が何人も自然発生して、さまざまな取り組みをしています。

例えば、チーム間の取組みを共有する際には、毎週一回、各部門の活動を発表する“バザール”というものを開催しています。“バザール”を開催することで、無関係の人も他部門の成果を見る機会が増えます。なんとなくでも全体像や自分の領域と関係する部分を感じてもらえることです。抜け漏れている横串の情報がつながりやすくなることで、進歩の実感を共有できます。

また、朝礼についても工夫してオリジナルのものを作り上げています。朝礼をやる目的は大きく2つあって「みんなが一つの方向に向かっている」ことを示すことと、「それぞれの人がお互いを知ること」だと考えています。このうち、特に後者を意識的にフォーカスして実施しています。

具体的には、1日1分、「何でもいいから好きなことを喋る」と毎朝、担当を変えて話してもらうようにしています。ただし、それだけだと皆準備しすぎてしまうので、朝礼の担当の人が、誰か別の人をその朝にいきなり当てるというスタイルにしています。

「ストーリーの力」のお話をしたように、プレゼン能力やコミュニケーション能力は大事なんですが、プレゼンの度にきちんと準備できるとは限らないですよね。「突発的なコミュニケーションにどう応えられるか」をエンジニアが鍛えるというのは、注目されにくい要素だけれども重要だと考えています。

また、少し特徴的な所でいくと、弊社は夜7時になると炊き出しをして「おにぎり」を振る舞うようにしています。大企業で昔よくあった「たばこ部屋」のイメージで、普段喋らない人同士でも話せるような空間と時間を「おにぎり部屋」として用意しているイメージです。たばこと違っておにぎりは食べられない人がいないですよね(笑)。他にも、皆が気兼ねなく好きなことを話すTech Lunch(テックランチ)を開催したり、金曜の夜の一定時間、冷蔵庫のお酒を飲み放題にしたり、朝食にフルーツを提供したり……。

とにかく、職人みたいになって個々が分断されるのではなくて、対話する、共感する事が重要だと考えて、皆の対話が促されるような取り組みを積極的に行なっています。

連載:起業家たちの「頭の中」
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文=小縣拓馬 提供元=Venture Navi powered by ドリームインキュベータ

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