肉だけじゃない 合成生物学が開く「アニマルフリー」食品の世界

画像はイメージ Gettyimages


興味深いことに、パーフェクト・デーはアイスクリームの生産を継続することを計画していない。少なくとも、アイスクリームの生産自体は同社では行わない予定だ。パーフェクト・デーのビジネスモデルは明確にB2B(企業向け)であり、動物を使わない乳清などのタンパク質を食品製造大手に販売することを希望している。同社は既に、米穀物大手のアーチャー・ダニエルズ・ミッドランド(ADM)と契約を結んでいる。

動物を使わない乳製品・卵の製造企業が増加

培養乳清を追求する企業はパーフェクト・デーだけではない。米合成生物学大手ギンコ・バイオワークス(Ginkgo Bioworks)のスピンアウト(会社の一部門が独立して別会社となったもの)であるモティーフ(Motif)もまた、乳清の発酵を大規模に行うことを検討している。投資ラウンドのシリーズAで9000万ドル(約95億円)を調達し2月に創業した同社は、現時点では動物を通じてしか調達できない他の多くの材料にも取り組んでいると述べている。

モティーフのジョナサン・マッキンタイア最高経営責任者(CEO)は「非常に多くのわくわくする興味深い機会があるため、確実に正しい機会に取り組むようにすることがこれからの課題の一つだ」と述べた。

クララ・フーズ(Clala Foods)もサンフランシスコ・ベイエリアのスタートアップで、鶏を使わない卵白など菓子作りの材料や栄養補助食品の開発に取り組んでいる。

この動きを心配すべきなのは肉屋や牛乳製造者、鶏卵農家だけではない。パーフェクト・デーの本社から北に10分ほど歩くと、レンガとガラスの研究棟に到着し、その近くには倉庫がある。そこでは、バイオテック企業のボルト・スレッズ(Bolt Threads)やニューヨークを拠点とするイコベーティブ(Ecovative)、モダン・メドウ(Modern Meadow)などの企業が動物を使わない皮革を生産している。

こうした企業が成功を収めれば、今後牛の数は減り(さらにその幸福度も上がり)、より持続可能な世界になるかもしれない。しかし本当の機会は、私たちがまだ見たことのないタンパク質にあるのかもしれない。

従来の食品製造業者は、動物でも植物でも、既に得ることができるタンパク質に縛られている。こうした材料は、私たちの味覚に合うよう数十億年間進化してこなかったものだ。合成生物学が進化し、DNAの読み書きや編集が楽になったことで、栄養素や味、香り、材料特性が向上した合成タンパク質の新たな世界が開けるかもしれない。

翻訳・編集=出田静

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