肉だけじゃない 合成生物学が開く「アニマルフリー」食品の世界

画像はイメージ Gettyimages

植物由来の代替肉商品を販売する米インポッシブル・フーズは、米国全土のバーガーキング店舗で動物性の食材を使わないハンバーガー「インポッシブル・ワッパー」の販売を始めた。その秘密の材料は大豆のヘムだ。ヘムは鉄分を自然に固めることで、牛肉にとても似た見た目と味をもたらす。

ホワイト・キャッスル、カールスジュニア、リトル・シーザーズなど多くのブランドも、牛肉を使わない商品をメニューに加えている。

こうした新たな肉代替商品が、率直に言って導入されそうになかった場所で使われるケースが増えており、従来の食肉製造業者は不安を感じている。しかし、バイオ技術の広がりは牛肉にとどまらない。

乳製品アイスを“牛なし”で作る

カリフォルニアのスタートアップ、パーフェクト・デー(Perfect Day)は先日、期間限定で動物を使わない乳製品アイスを発表した。これにより同社は初めて、米国の約90億ドル(約9500億円)規模の乳清タンパク市場に参入した。

パーフェクト・デーは、砂糖を牛乳の2つの主要なタンパク質材料である乳清とカゼインに変化させるため、昔から使われている発酵プロセスを活用する方法を思いついた。同社は先日、この乳清を脂肪や砂糖などの材料と合わせて泡立て、ミルキーチョコレート味、バニラ塩ファッジ味、バニラ・ブラックベリー・トフィ味のアイスをそれぞれ1000個製造した。

1つ(1パイント/473ミリリットル)につき20ドル(約2100円)の値段でさらに送料がかかるアイスを誰が買うのだろうかと思うかもしれないが、好奇心旺盛な多くの人々が同商品を買い求めたようだ。急速に売れおいしいと評される同商品は、牛を1頭も使わずに作られた初の本物の乳製品アイスとなった。

パーフェクト・デーは、ビーガンの科学者であるライアン・パンジャとペルマル・ガンディによって5年前に創業された。同社の目的は、人々に愛されている乳製品を動物を犠牲にすることなく作ることだ。

牛は肉や牛乳を提供する良いタンパク源ではあるが、産業的な畜産農業が地球に大きな影響を与えることはビーガンでなくても認識できることだ。1頭の乳牛は、1日に少なくとも約45キログラムの餌を必要とするため、牛を維持するためには広大な農地が必要になる。またメタンガスを多く含む牛のゲップも気候変動に深刻な影響を与えている。

必要なものが牛から得るタンパク質なのであれば、そのために牛を育てる必要があるだろうか?

この問いと、6000万ドル(約63億5000万円)のベンチャーキャピタルにより、パーフェクト・デーは牛を使わないタンパク質生産プロセスを開発した。同社のプロセスでは、細菌を活用している。タンパク質の浄化のためにはいまだにろ過が必要ではあるが、同社の見積もりによると工業化された畜産農業と比べて必要なエネルギーは半分以下、必要な土地は98%減る。
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翻訳・編集=出田静

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