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2019.08.13

起業家がストックオプション制度を作る際に知っておきたい5つのポイント

Photo by Florin Burlan / Shutterstock.com

ストックオプション、ときに、略してSO(エスオー)。それは、スタートアップなどの企業で、人材確保を目的に、報酬として付与されることが多い。

人材不足、資金不足、幾度となく現れる壁との戦い──。スタートアップでは人材の採用に際して、魅力的な報酬を提示するのが難しい場合があるだろう。そのような場合でも、給与報酬に加えてストックオプションを組み入れることで、魅力的な報酬スキームを提示できれば、有能な人材を確保できる可能性が高まると言える。

Forbes JAPANではストックオプション設計のポイントについて、7月31日に発売された『ベンチャー企業による資金調達の法務』(2019年、商事法務)を執筆した桃尾・松尾・難波法律事務所所属の角元洋利弁護士に聞いた。

角元氏は著書で、スタートアップが種類株式を用いて資金調達を行う場面を念頭に、種類株式や投資契約および株主間契約といった要項や、資金調達と関係が深いストックオプションについても基本的事項を解説している。

本記事では角元弁護士の監修のもと、スタートアップ起業家がストックオプションを設計する際に、知っておきたい5つのポイントについて解説する。税制適格ストックオプション、発行上限数、付与対象者、コスト、割当契約書で押さえるべき点など、概要をカバーした。

1. 従業員向けストックオプション設計時に考慮するポイント

従業員向けに報酬としてストックオプションを発行する場合は、従業員がストックオプションの発行と引き換えに金銭を払い込む「有償ストックオプション」を利用する例もあるが、従業員に金銭負担のない「税制適格ストックオプション」を利用することも多い。

税制適格ストックオプションとは、付与時及び行使による株式取得時には税金がかからず、株式の売却時にだけ税金がかかるストックオプションだ。

その最大のメリットは、従業員が金銭を手にする株式の売却時までキャッシュアウトなしでインセンティブを付与できることである。

デメリットは、他のストックオプションとも共通するが、付与されない従業員の士気低下や、付与時に想定していた役割を従業員が担わず、将来的にストックオプションによる報酬と社員による貢献が不釣り合いとなりうることがあげられる。

まずはメリットとデメリットを比較の上、税制適格ストックオプションを発行するか否か、発行する場合の数量やタイミングについて検討するのが良いだろう。
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文=森屋千絵

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