2. ストックオプションの上限は株式発行数全体の10〜15%
ストックオプションの発行上限数について、会社法上に特別な制限はない。
ただし、スタートアップがベンチャーキャピタル(VC)等から資金調達する際には、ストックオプションが大量に行使され、株式が希釈化されることをVCが嫌がる傾向にある。
その関係で、ストックオプションを発行することができる上限をその時点における潜在株式(ストックオプションをはじめとした新株予約権、新株予約権付社債などの行使されると株式となる権利)も含めた株式の総数の10〜15%程度に設定することが多いようだ。
3. 税制適格ストックオプションの付与対象者
税制適格ストックオプションを付与することができるのは、原則として、税制適格ストックオプションを発行する会社又はその子会社の取締役や従業員に限定されている。
監査役、大口株主とその親族等も税制適格ストックオプションの付与対象者から除外されており、非上場企業の場合には1/3超の株式を有する者(通常、創業者が該当)は大口株主として除外されている。
税制適格ストックオプションの付与対象者については、平成31年税制改正によりその範囲が拡充されており、中小企業等経営強化法に基づく認定を受けた「認定社外高度人材活用新事業分野開拓計画」に従って事業に従事する外部協力者(プログラマー、エンジニア、医師、弁護士等)にも、税制適格ストックオプションを付与できるようになった。
ただし業務委託など社外の人材に税制適格ストックオプションを付与する場合は、業務委託契約期間が2年以上等の条件が「社外高度人材活用新事業分野開拓に関する命令」に定められており、この条件を満たして、業務委託のメンバーに税制適格ストックオプションを付与するのはハードルが高いかもしれない。
4. ストックオプションの登記にかかるコスト
ストックオプションの設計時のコストとして、税理士による株式価値算定の報酬、要項案を確認してもらう場合の弁護士等の専門家報酬、登記手続に司法書士を使用する場合の報酬を念頭におく必要がある。なおストックオプションの発行に伴う登録免許税は9万円である。
また、細かい点だが、ストックオプションを発行した後、付与された従業員が退職するなどして、ストックオプションを行使できなくなった場合には、新株予約権が消滅したとして、その都度、2週間以内に変更登記(登録免許税3万円/件)を行うことが必要となる。
ストックオプションを付与した従業員が退職する毎に登記をすることを防ぐために、退職時には新株予約権を会社が取得するという条項をあらかじめ契約書に盛り込むと、手間やコストが省けるだろう。