「お前でだめなら仕方ない」 勝負どころで信頼される人の条件|太田雄貴 #30UNDER30

日本フェンシング協会会長 太田雄貴


波をつくるアスリート、一定のリズムが大切な経営者

現役引退後は、日本フェンシング協会の会長になったり、自分で会社を立ち上げたりなど環境の変化がありました。ビジネスのシーンでも面白くエキサイティングな出来事はたくさんありますが、アスリート時代の高揚感とビジネスのそれとは全く異なることを実感しています。でも、違うからこその学びもあるんです。

アスリートとして圧倒的なパフォーマンスを発揮するために必要なのは、調子が落ちるときをしっかり許容すること。平均点を連続してだせても、ピークの頂点は高くなりません。全ての大会をベスト8で終わるのではなく、全日本でベスト64もあれば世界選手権で優勝することもある。現役時代は、そんな調子の波を意図的につくっていました。

しかし、ビジネスでは波を作らないことが大切。会社の業績に大きな波があってはいけないですからね。でもまだ選手時代のリズムが身に染み込んでいて、一定のリズムを高い水準で保つことは苦手なんです。

だから最近、ランニングを始めたんですよ。ランニングって常に一定のペースじゃないですか。だから「一定のペースで走ること」を体に叩き込もうと。最近やっと「楽しい」と思える入り口まできたかな。



信頼を勝ち取る準備期間

これまでの経験を経て感じるのは、20代は小手先のテクニックを磨くより、徹底的に本質を磨くべきということです。

テクニックで生きる術を覚えるか、基本を積み重ねるかで30代からの伸びが全く変わりますから。 フェンシングでもそう。「小さい頃は強かったのに」と思う選手は、基本を怠って小手先の技の習得に走るんです。

確かに若いうちは、テクニックを磨けば勝てるかも知れない。でもテクニックはいずれ行き詰まり、差がつくのは「いかに基本を積み重ねたか」なんです。他人と比べるとつい焦ってしまう人もいるかも知れないですが、やはり20代は本質、つまり基本的な知識や姿勢を身につけることに注力するべきだと思います。
次ページ > マイケル・ジョーダンの名言

文=田中一成 写真=小田駿一

タグ:

連載

30 UNDER 30 2019

ForbesBrandVoice

人気記事