「お前でだめなら仕方ない」 勝負どころで信頼される人の条件|太田雄貴 #30UNDER30

日本フェンシング協会会長 太田雄貴


20代は、目先の成果よりも大事なことがある。それを表す好きな言葉があります。

バスケットボールの神様、マイケル・ジョーダンが引退するときに現役時代を振り返った際の言葉です。彼は輝かしい勝利の体験を語らずにこう言いました。

「試合終了の5秒前、ラストショットのタイミング。そのとき、必ず僕にボールが回ってきたことが、私の最高の誇りです」

相手選手もジョーダンの凄さを知っているので、必ず彼にディフェンスが集まる。けれど、味方は最後の5秒で必ず彼にパスを出す。それは「お前で負けたら仕方ない」というメッセージだと思うんです。

フェンシングで言えば、団体戦の最後となる9試合目がバスケのラストショットに近い。9試合目は選手としての強さ以上に、チームの精神的支柱になるタフさが求められます。

ロースコアで回ってきたらアグレッシブな試合をして、合計スコアを盛り返さないといけません。 僕が団体戦で9試合目を何度も任せてもらえたのは、「雄貴で負けたら仕方ない」とメンバーに思ってもらえていたからかなと。チームキャプテンとしての最高の誇りでした。

「お前で負けたら仕方ない」。ビジネスでもスポーツでも、仲間からそう言ってもらえる準備をすることが、素敵な20代の過ごし方だと思います。



おおた・ゆうき◎1985年生まれ、滋賀県出身。2008年、北京オリンピック男子フルーレ個人で銀メダルを獲得と日本フェンシング界初のオリンピックメダリストとなる。FIE(国際フェンシング連盟)の選手副委員長、東京2020オリンピック・パラリンピック招致委員会招致アンバサダ、公益社団法人日本フェンシング協会会長。

太田雄貴が「スポーツ部門」のアドバイザリーボードとして参加した「30 UNDER 30 JAPAN 2019」の受賞者は、8月23日に特設サイト上で発表。世界を変える30歳未満30人の日本人のインタビューを随時公開する。

昨年受賞者、「スーパーオーガニズム」でボーカルをつとめる野口オロノや、昨年7月にヤフーへの連結子会社化を発表した、レシビ動画「クラシル」を運営するdelyの代表取締役・堀江裕介に続くのは誰だ──。

文=田中一成 写真=小田駿一

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30 UNDER 30 2019

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