シネマの女は最後に微笑む

(左から)スティーブン・スピルバーグ監督、メリル・ストリープ、トム・ハンクス

共同通信によれば、4日、戦後日本の重要な民事裁判の記録の多くを、全国の裁判所が廃棄処分していたことが判明した。

判決文は概ね残されていたものの、審理過程の文書が失われており、重要裁判記録の保存義務違反の疑いがあるという。いずれにしてもこれで、合憲か違憲かを巡って争われた歴史的な憲法裁判の検証が不可能になってしまった。

先月22日には、日本年金機構の東京広域事務センターが、個人情報を含む年金関連データを収載したDVDを紛失していたとして、批判を集めたばかりである。厚生省はこの事態を把握していたが、選挙後まで公表しなかった。

「権力の監視」というメディアの役割

近年相次ぐ、重要な公文書の紛失や改ざん。2007年には社会保険庁のオンライン化したデータに誤りや不備が多いことが判明し、年金記録のずさんな管理が批判されているし、2017年には財務省が森友学園交渉記録を、陸上自衛隊が南スーダンPKO派遣日報を廃棄したとして、大問題になっている。

こうした状況に斬り込んでいくべきは、国会と報道機関だ。為政者と官僚の不祥事が続く中、特に後者に期待したいところだが……どうだろうか。

今回取り上げるのは、スティーブン・スピルバーグ監督の2017年の話題作『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』。ベトナム戦争が泥沼化する中で、米政府が国民に隠し通してきた戦争の実態を明らかにしようと奔走する、新聞社の人々の闘いを描いている。第90回アカデミー賞で作品賞と主演女優賞にノミネートされた他、数々の映画賞を受賞した。

「時の権力に対する監視」というメディアの役割と報道の自由を謳い上げる、非常にストレートなメッセージが託された本作では、特ダネを巡って社運を賭けた新聞社同士のつばぜり合い、記者たちの裏の駆け引きなどがスリリングに描かれる。

中でも、ワシントン・ポストの社主キャサリン・グラハムが、人間関係と利害関係の桎梏に悩みつつ、進むべき道を見出していく過程が興味深い。

「我々がやらなくて誰がやる」

ニクソン大統領政権下の71年、一貫して戦況は米国側に有利と伝えられてきたベトナム戦争だが、その内実は違っていた。マクナマラ国防長官の元で、ベトナム戦争の分析・記録の作成に関わった軍事アナリスト、エルズバーグは、その国防省の最高機密文書、通称「ペンタゴン・ペーパーズ」を勤務先の研究所から持ち出し複写、一部をニューヨーク・タイムズの記者に流す。

タイムズ紙のスクープが社会を震撼させる中、ワシントン・ポストの編集主幹ベン・ブラッドレー(トム・ハンクス)は、何とか残りの文書を入手しようと手を回しつつ、マクナマラ長官と友人関係にある社主のキャサリン・グラハム(メリル・ストリープ)に、長官から文書を入手するよう進言するも、キャサリンは犯罪行為だとして拒否。

文=大野 左紀子

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