筆者:敵を愛するということに関して、ネルソン・マンデラから学べることはなんでしょう?
ブルックス:マンデラのような世界史上のリーダーらから学べる重要な教訓は、勝利に向けた最善の長期的戦略は愛だということ。
誤解のないように言うと、ここでの愛とは感傷的で一時的な感情のことではなく、強固で支えとなるようなものだ。他人を真に愛するというのは、たとえそれがあなたを軽蔑したり虐待したりする人であっても、全ての人のために徹底的に努力する姿勢を体現することだ。マンデラは殴打され、投獄され、長年にわたり労働を強制させられたが、自分を捕らえた人々を愛し、友人にすらなれる不屈の精神を持っていた。愛とは、無関心や無活動のことではない。
マンデラはアパルトヘイト(人種隔離政策)という悪に断固として立ち向かった。しかしリーダーとして、自分を憎む人々と同じやり方で反応すれば軽蔑の悪循環を続けることにしかならないことを理解していた。私たちのリーダーも、破壊的なイデオロギー上の聖戦を続けるのではなくマンデラに倣えば、大きな恩恵を受けられるだろう。
筆者:意見の異なる人々と健全な関係を保つのに最も役立つ「ルール」を3つか4つ挙げていただけますか?
ブルックス:第1のルールは著名な心理学者で結婚カウンセラーのジョン・ゴットマンが提唱する「5対1ルール」だ。これは、パートナー(この場合は友人)に対して1つ否定や批判をするたびに、肯定的あるいは励みになるような言葉を5つ伝える、というもの。意見が合わない人と話す時にこのルールに従えば、世界は全く違ったものになる。
2つ目は、意見の違う人を侮辱したり、隠れた動機があると考えたりしないこと。全ての人には、今の信条を持つようになった経緯がそれぞれある。相手を悪人として受け止めたり、直接侮辱したりすれば、その人を説得して自分と同じ見方をしてもらえる可能性はほぼなくなる。侮辱されることで他人の意見に従う人などいない。
3つ目のルールは「なにを」ではなく「なぜ」から始めること。意見が合わない人の大半は、特定の政策に対する信念(「最低賃金を上げろ!」)を口にする一方で、その信念に至る動機(「特に最貧層の米国人がより多くの給与を受け取れるようにする政策が必要だ」)は語らない。
しかし「なぜ」から始めることで、「なにを」が異なる人とも共通の原因を設定することができる。そうした人は、あなたが自分と同じことを達成したいのだと分かれば、耳を傾けてくれる。こうした共通の「なぜ」を持つことによって、意見の違いを減らすのではなく、より良い形で意見を対立させることができる。