北極圏で観測史上最大の「氷の溶解」、1日125億トンが海に

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北極圏のグリーンランドで観測史上最大の氷の溶解が発生した。8月1日には24時間の間で、氷河に覆われたグリーンランドから125億トンの氷が溶け出したという。

現地の科学者らはその模様を動画で撮影し、溶けた氷が川に流れ込む映像を記録した。気候科学者のMartin Stendelは計測データから、今回の溶解で発生した水の量が、フロリダ州全土を水深13センチの水で覆う規模に相当すると述べた。125億トンもの氷が24時間で溶解するという事態は、1950年に観測を開始して以来初めてだという。

グリーンランドを覆う氷の表面の約60%が、数日間で溶けたという。北極に近い地域での温度上昇により、これほどの氷の溶解が起きるのは、極めて異例のことだ。

今年の夏は世界各地で猛暑の記録更新が相次いでいる。7月の欧州で発生した熱波により、パリでは観測史上最高となる気温42.6度が記録された。この熱波がグリーンランドに移動したことにより、北極圏にも記録的な猛暑をもたらした。

北極圏の気温は、地球全体の平均の2倍を超える速度で上昇していることがNASAの研究でも述べられている。北極圏では氷が溶けて地面が露出することで、熱の吸収率が高まり、それがさらなる温暖化を招いている。

溶けた水が大西洋に流れ込み、海面上昇を引き起こしていることが衛星画像からも確認されている。冬になれば北極圏では新たな氷が形成されるが、溶け出した分の氷を完全に埋め合わせることは難しい。

世界で頻発する異常な熱波や前代未聞の氷の溶解は、地球環境の変化を物語るものといえる。人類が何らかの措置を講じない限り、この変化を止めることは出来ない。

編集=上田裕資

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