「全然同意できない」とはっきり言い合う。多国籍のチームづくりは山あり谷あり

シンガポール法人のメンバーたちと筆者(左から2人目)


もう一つ、新しい同僚たちと働くようになって衝撃を受けたことがあります。それは、彼らのポジティブな明るさと自信でした。

皆の前ではいつもポジティブで、自分のできることをしっかり伝えます。そして、失敗しても落ち込んだりせず、「結果はこうだった。こんな学びがあって、だから次はアクションを変えていく予定だよ!」と、すぐに切り替えるのです。

そういうメンバーなので、周囲もどんどんアドバイスやフィードバックを伝えていきます。何より、私自身が一緒に仕事をしていて楽しいチームメイトでした。

海外進出に関わるなかで、挑戦しては失敗し、日々もがいている最中だった私は、「『でも』と『無理』」が口癖だった時期がありました。でも彼らとチームで仕事していくうち、考え方も少しずつ変わっていきました。

“グローバルスタンダード”ではなく“チームオリジナル”な価値観


2019年6月、グローバルチームに、エンジニア(右端)が加わった 

数々のカルチャーショックを一通り味わい終えた2018年、チームで決めた「チームカルチャー」があります。

これまで言い合いになるとよく、同僚から「このやり方がグローバルスタンダードだから」と言い返されることがありました。そう言われると、海外勤務の経験のない私は黙るしかありませんでした。

一方で、「グローバルスタンダードって、ほんとのところ何だろう」と思っていました。単に欧米的なカルチャーを指しているだけなのではないのか、と。そのうちシンガポールもタイも日本も違うことが分かってくると、本当はもっと多様なのにスタンダードが大くくりにされていると思うようになりました。

だから、日本の組織VSグローバルスタンダードという二項対立ではなく、自分たちチームのメンバー自身が納得できる価値観を独自に設定する必要があると考え、次の4つの言葉に込めました。

1. Commitment to the Outcome
─プロセスよりもゴールと成果を重視する姿勢

2. Commitment to being Positive
─常にポジティブに挑み続けようという姿勢

3. Commitment to the Team
─チームのゴール>個人のゴールという優先順位を持ち、チームの成果が出るよう助け合う姿勢

4. Commitment to Challenge
─メンバーの成長が会社の成長。迷ったら困難な挑戦を選ぶ姿勢

ここには私にとって馴染み深い価値観も、新しく学んだ価値観も含まれています。チームメンバーにとってもそうだったと思います。互いの価値観を理解し合った上で、スタートアップチームとして大切だと全員で合意できた「ハイブリッドカルチャー」は、メンバーが3倍に増えた今も、チームに浸透しています。


グローバルチームのカルチャーをSlackに毎日表示している

海外進出のTips

1. 初期メンバーは、肩書や組織がないところから事業を生み出せる人
──ベンチャーの海外進出は、アウェーの地で、会社の看板、肩書、事業や組織がないところから責任持って事業を生み出すことが必要

2. 結論ファーストで肯定・否定をはっきり話す大切さ
──意見の否定と人格否定は全く別物。結論を端的に伝えることで多国籍組織のコミュニケーションは円滑に

3. “グローバルスタンダード”にとらわれず“チームオリジナル”な価値観を探る
──日本vs海外の二項対立ではなく、このチームにとって何が大切な価値観なのかを決めることが、チームの成長に直結する

連載:AIベンチャー海外進出の「泥臭い」リアル
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文=夏目萌

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