「全然同意できない」とはっきり言い合う。多国籍のチームづくりは山あり谷あり

シンガポール法人のメンバーたちと筆者(左から2人目)


結論ファーストで肯定・否定をはっきり話す同僚たち

ともに働くようになってほどなく、私は同僚とのコミュニケーションで戸惑うようになりました。

例えば営業資料に盛り込む内容を私が提案したときのこと。

「Completely disagree(全然同意できない)」

一人の同僚のこの言葉にグサッと来ました。「全然同意できないってなに...…」。自分が「ダメ人間」と否定されたような気持ちになりました。

ですがそのうち、言った本人に他意はないことがわかりました。ただ私の提案に「同意できない」と意見を述べただけで、人格を否定している訳ではないのです。

Slackでも、皆「Yes」「No」「No Problem」とそっけない返事だけ。私だけかと思ったら、顧客にも一言メールで終わらせていたのです。そのうち、彼のコミュニケーションは、結論ファーストなのだと気づきました。

異なる文化や母語、境遇を持った人の集まるチームで意思統一を図るためには、解釈が分かれないはっきりしたコミュニケーションが必要なのだと思いました。

私も「Disagree」や「I have the same idea」といった言葉を使って同僚たちのような簡潔でストレートな伝え方をまねてみようとしましたが、最初の一言が出ない。「いままで自分の意見や結論を明確に伝えてこなかったんだなあ」と痛感しました。

時間がたつにつれ、結論をしっかり伝えて意思疎通を図れるようになりました。むしろ今は、相手の真意をくみ取ったり言い回しに気を遣ったりする必要のないコミュニケーションの方が楽になりました。

設定したゴールに忠実、自分が担当して価値が出る仕事だけに注力

仕事への姿勢の違いも、面食らったことのひとつです。

立ち上がったばかりの拠点は、営業活動以外にも、人事、管理、マーケティング、資料の作成や翻訳など、仕事が山積みになっていました。私は入社時から、そういう状況が当たり前だったので、本業以外の仕事にも手を動かすことは当たり前でした。

ですが、新しい同僚は「これは自分の仕事ではない」というのです。理由は「期待されていること、担うべき仕事に専念したいから」。

私も言い返します。「スタートアップなんだから仕事は拾い合わないとやっていけないじゃない。『自分の仕事』以外もコミットしてほしい」

でも、同僚も納得しません。「この資料はきっと日本語版の資料があるはず。萌がそれを見つけて訳せばそれで済むじゃないか」

パッと見、正論です。でもその資料を見つけるのも、訳すのも私なのです。そこへの違和感ときたら……。彼らがわがままだったとか仕事をしたくなかったというわけではありません。むしろ、約束した仕事の納期は必ず守っていました。

4人体制になっても私の仕事は減るどころか増えていきました。仕事が積み重なり、納期に遅れるタスクが多くなり、メンバーから怒られました。言われっぱなしで悔しかったけれど、交渉力も英語もつたない私がうまく反論できないまま「議論が長引くくらいなら」と途中で諦めて引き受けてしまうことがしょっちゅうでした。

「チームの中で、もっともこの仕事をうまくやり遂げられる人が仕事を引き受ける」。そう望む気持ちは共通していました。今だったら「私がやってもいいけど、これまで持っていた仕事が進まなくなる。だから、これまで持っていた仕事を代わりにやってくれない?」と対話できると思います。
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文=夏目萌

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