経済・社会

2019.08.09 08:00

寒いはずの北極で「山火事」頻発、過去最悪の異常事態

アラスカ州タルキートナでの山火事から立ち上る煙(7月3日)。一部地域で記録的な高温と乾燥に見舞われたアラスカ州では火災を警戒している。(Photo by Lance King/Getty Images)

7月の後半から北極圏を煙が覆っている。NASAの人工衛星から撮影された画像で、シベリア地域で数週間にわたり山火事が続いていることが確認された。

シベリアを含むロシアの一部やカナダ、そしてアラスカなどで起きている山火事から立ち上る煙の様子を複数の人工衛星が観測している。ヨーロッパのコペルニクス大気監視サービス(CAMS)はこの数か月、北極圏で大気中に汚染物質をまき散らしている100以上の山火事をモニタリングしている。

「北極圏での山火事は前代未聞のレベルに達している」とCAMSの上級研究員Mark Parringtonはツイートした。

シベリアのクラスノヤルスク地方とサハ共和国を襲っている山火事は「驚異的レベルに達している」と大気化学者のSantiago Gasso博士は語った。煙の層が薄い雲を形成し「地表に降り注ぐ太陽光が大幅に減る」という。

この山火事は大気の質を悪くするだけでなく、気候変動を加速させる可能性もある。しかも、今回の記録的な山火事は気候変動による乾燥によって引き起こされたため今後、悪循環が続いていく可能性もある。

「高緯度の地域でこれほどの規模と持続期間の山火事は珍しい」とParringtonは7月に述べていた。「北極圏の気温の上昇スピードは地球全体の平均と比べて速く、火災は高い気温によってさらに大きくなっている」

7月にはグリーンランドの山火事の動画を飛行機の搭乗者らが撮影した。2019年の6月は観測史上最も気温が高い6月となった。

7月初めから第3週までに北極圏の山火事によって大気中に放出された二酸化炭素の量は、ブルガリア、ハンガリー、そしてスウェーデンの化石燃料による年間の二酸化炭素排出量に相当するとParringtonは話した。

しかも、氷が覆う場所に黒いすすが落ちることにより、太陽光をより吸収して氷が解けるペースがあがり、さらなる状況の悪化を招いている。

編集=上田裕資

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