ビジネス

2019.08.10

日本が観光超大国になるために 「フレンドリー」をもう一歩先へ

エクスペディアグループ日本法人代表取締役 マイケル・ダイクス(左)、東京レインボープライドの共同代表理事 杉山文野(右)

自身もトランスジェンダーで日本最大のLGBTプライドパレードを運営するNPO法人・東京レインボープライドの共同代表理事を務める杉山文野との対談で、自らがLGBTであることを明かしたマイケル・ダイクス

彼は、世界最大手のオンライン旅行代理店であるエクスペディアグループの日本法人の代表取締役だ。

「リーダーがカミングアウトをすることの重要性」を語った前回に続き、ダイバーシティの向上がもたらす力の大きさを説く。


杉山:2015年にエクスペディアグループの日本現地法人の代表取締役に就任、そのタイミングでカミングアウトもされて、社内の反応はいかがでしたか。

ダイクス:エクスペディアは当時も今も開かれた会社で、偏見がほぼないと思います。悪い反応はなかったですし、一方ではLGBTだから特別視されているわけでもないです。

「リーダーがオープンなら、自分もオープンになってもいいんだ」と安心する社員もいて、組織としてもいい影響があったようです。

杉山:カミングアウトされたことで、仕事のパフォーマンスに変化は出ましたか?

ダイクス:ありました。不思議なぐらい現場や部下との距離がグッと縮まって、エクスペディアの重要な価値観である「Open and Honest」を体現できた気がします。結果的に、より一層風通しのいい組織になりました。

杉山:勝間和代さんが「弱みを見せるコミュニケーション」と以前の対談でおっしゃっていました。上に立つ人の強さを前提にした、上から下へ伝えるコミュニケーションではなく、みんながいつも強いわけではないという前提で横につながっていくコミュニケーションですね。

日本の企業の経営者で、ここまでオープンな方をダイクスさんの他に知りません。経営者でも、芸能人でも、本人がオープンにしたくても、会社や事務所が認めないというケースも多いんです。

ダイクス:私たちは個人であると同時に、ひとりの社員でもあります。「個人としての決断が会社に害を与えたら……」という葛藤は誰にでもありますよね。二者択一の理不尽な世界でなくて、個人の幸せが会社への貢献にもなるという気付きがあればいいのですが。

杉山:オープンにされて、仕事の上で困ったことなどはありますか。

ダイクス:ないです(笑)。旅行業は万人を受け入れるビジネスです。歓迎しておもてなすのが基本ですから、私もすんなり受け入れてもらえたのではないでしょうか。ただし、私はハーフで外資系企業に務めているこという恵まれた環境にいることも、十分認識しています。
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構成=岡田浩之 写真=藤井さおり

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