杉山:ダイクスさんがメディアでこの話をされるのは、今回が初めてですか?
ダイクス:取材を受けて、というのは初めてですね。自分にとってはもう特別なことではないので、聞かれれば話します。聞かれなければ話さない、ということですが(笑)。
仕事でもプライベートでも、もう怖いものはありません。これまで築いてきた実績と経験に誇りを持っているからこそ、まだ自信や実績のない次世代のLGBTにありのままの姿を見せることも重要だと思います。
もうひとつ、非常にプライベートなこともお話ししていいですか。
杉山:もちろんです。
ダイクス:15年間も一緒にいた最愛のパートナーが、2016年に亡くなりました。
人生を共に歩んできたという意味では、婚姻関係にあったも同然でした。しかし、法整備も進んでおらず、正式に結婚することができなかったことは今でも悔しいです。
彼の死で、結婚する機会も永遠に失いましたが、葬儀は結婚と類似点があることに気づきました。どちらも家族や友人を集めて、気持ちを分かち合い、その出来事の生き証人になってもらいますよね。
法の下での結婚はできませんでしたが、彼という素晴らしい人間が確かに存在したこと、そして二人で幸せに歩んできたことを参列者にわかってもらえたと思います。パートナーの死を経験したことも、私の強さの理由かもしれません。その辛さを超えることはもはや不可能です。だから、何が起きても怖くないんです。
杉山:大きな経験をされたんですね。お話しくださって、本当にありがとうございます。
ダイクス:全ては彼のおかげです。エクスペディアに入るときにカミングアウトすることを許してくれたのも彼でした。彼の死によって私は「ありのままで生きていこう」とあらためて強く思うことができたんです。(後編へ続く)