ビジネス

2019.08.07

レイ・イナモトが語った「デザイン・シンキングの限界」の真意、21世紀の日本のチャンス

I&CO Tokyoを設立したレイ・イナモト


I&COが標榜したのは、“Business Invention Firm”。クライアント自身ですらまだ言語化できていないような、漠然とした課題感を対話によって紐解き、顧客との新たな接点となる機会を創出し、それに対して最適な顧客体験(Customer Experience)を実現していく。その手段は、「広告」に限らない。

「日本ではどうしても『クリエイティブ』というと、CM制作やキャンペーン展開など、限定的なものをイメージされてしまう。私たちの意図する『クリエイティビティ』はもっと大きな意味で『これまでにない新しいものをつくる』ということ。その重要性に、いまお付き合いしているクライアントの経営陣は、無意識的に気づいていて、常に何か新しいもの、世の中を大きく動かしていくようなことを求めているのです」(イナモト)

スターティングメンバーの集結で「I&CO Tokyo」が始動

“Business Invention”という言葉に、もう一人影響された人物がいた。アクセンチュアでストラテジー・マネジャーを務め、今回の「I&CO Tokyo」開設にあたり、共同代表に就任し戦略部門を統括する間澤崇氏だ。「僕自身、コンサル会社でさまざまな企業に関わってきましたが、ある程度のところまで行くとコンサルテーションがテンプレ化してしまう。果たしてそれはクライアントのためになるのだろうか、と感じるようになっていました」(間澤)

そんなとき、ふと検索で見つけたのがI&COだったという。

「まったく異なる業界にいたので、良くも悪くもクリエイティブのことがわからなかった。レイさんのことも知らなかったんです。ただ、“Business Invention Firm”というコンセプトに惹かれて、2年ほど前に公式サイトのインフォに問い合わせたのです。『日本で活動される機会はないですか?』と」

一方、イナモト氏は2016年から日本企業とのプロジェクトについて、クリエイティブクラウド「PARTY」との共創を進めていた。そこで出会ったのが、I&CO Tokyo共同代表に就任し、クリエイティブを統括する高宮範有氏だ。

「この3年くらい高宮とともに仕事をする中で、『いつウチに来る?』みたいなことはたまに話していたんです。間澤とも数カ月に一度、情報交換のような形でやり取りするようになって、この二人がスターティングメンバーとして揃えば、東京オフィスを立ち上げるのにふさわしいのではないか、と、昨年秋から今年にかけて二人と話し合い、このタイミングでのスタートになったわけです」(レイ)

I&CO Tokyoの設立は、日本のビジネス・リーダーからも歓迎されている。ファーストリテイリングの柳井社長はこう言う。

「かねてより、我々ファーストリテイリンググループの企業理念にご共感いただき、仕事を共にしてきたI&COが、東京にオフィスを構えることを、大変心強く感じています。力強いパートナーとして、これまで以上に活躍していただけることを期待しています」(柳井)


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文=大矢幸世、写真=小田駿一

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