日本のリーダーたちは「サマーダボス2019」で何を見たのか

写真:世界経済フォーラム

世界で最も権威ある会議のひとつ、世界経済フォーラム年次総会。通称、ダボス会議。世界経済フォーラム(WEF)が主催するこの会議は、その呼び名の通り、毎年1月にスイス・ダボスで開催され、ビジネスや政治、文化人、アカデミアなど、各界のリーダーたちが一堂に会し、世界の課題について議論する。

また、同じくWEF主催の「サマーダボス」と称されるグローバル成長企業を対象とする会議が、毎年中国で開かれている。今年は7月1日から3日まで大連で開かれ、日本からも各分野のリーダーたちが集結した。

彼らは何を見、何を感じたのか。日本人リーダーたちに聞いた。


「データのTrustを守りつつ、利用可能フェーズへ」
 ──WEF第四次産業革命日本センター ヘルスケア・データ政策プロジェクト長 藤田卓仙氏

今回初めて、かつ、スタッフ側で参加したのだが、イベントの回し方や、イベントの脇でいろいろなネットワーキングがなされている様子に感心した。

イベントに参加してみて、DFFT(Data Free Flow with Trust)」に代表されるように、データの取扱いに関する国際的な議論が各分野において出てきていることを感じた。今後は、DFFTでいうところのT=Trustをどのように考えるかが特に重要になってくると思う。

ヘルスケア関連のセッション(Healthy Data)に関わり、その中でAPPA(Authorised Public Purpose Access)という概念を提唱(慶應・宮田教授から紹介)した。DFFTは非個人情報の流通に主眼をおいているが、個人情報であるヘルスケアデータがどのようにTrustを守りつつ、利用可能になるかということを、今後グローバルに議論していければと思っている。

「データの価値がどのように企業や社会に還元されているのか」
 ──東京大学空間情報科学研究センター 特任研究員 新井亜弓氏

地球規模課題に様々な側面から取り組もうとする、様々なコミュニティやセクターの方々と議論の場を持てたことが非常に有益だった。

世界各地で起きている分野横断的な課題解決にあたって、産学官のパートナーシップに期待される役割はますます重要になりつつあることを実感した。ビッグデータを利活用するのためのプラットフォームに関する議論は、今後さらに加速していくだろう。データから得られる見識、データの保護、プライバシー、一般市民の理解、企業のインセンティブ等のバランスのとれたエコシステムを構築する上で、大学が果たすことができる役割は益々増えていくのではないかと思う。

私の所属する研究室では、国内外の企業データを使った研究や活動に取り組んでいる。そこで得られた成果が企業や社会にどのように還元され、人々に受け入れられていくのかという点を意識し、明示的に研究成果や活動を発信していきたいと考えている。
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構成=谷本有香 写真=世界経済フォーラム

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