顔認証テクノロジー分野では既にアマゾンやグーグルが同様な批判を浴びたが、アメリカ自由人権協会(ACLU)はマイクロソフトについても、厳しい目を向けている。
マイクロソフト社長のブラッド・スミスは、AnyVisionの技術の利用について、透明性を確保しつつ責任ある運用を行うと宣言している。マイクロソフトは今年6月、投資部門の「M12」を通じ、AnyVisionの総額7800万ドル(約83億円)のシリーズA資金調達に参加すると宣言した。出資には、「LightSpeed Venture Partners」や「Robert Bosch」、さらに「クアルコムベンチャーズ」らも参加した。
AnyVisionのテクノロジーは、香港のデモ活動の監視にも利用されているほか、マカオのカジノでも採用された。さらにロシアの空港でも同社の顔認証技術は活用されている。創業から2年のAnyVisionの顔認証技術の精度は99.9%で、イスラエル政府はヨルダン川西岸におけるパレスチナ人の監視活動にこの技術を利用中だ。
AnyVisionはイスラエルの軍事及び諜報部門と強いつながりを持つ。相談役のトップには、イスラエル諜報特務庁(モサド)の元主任のTamir Pardoが就任し、プレジデントを務めるAmir Kainは、国防省のセキュリティ部門のトップを務めた経歴を持つ。
国際人権NGOのヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)のAmos Tohは、「AnyVisionのような政治色の強い企業にマイクロソフトが出資することは、様々な懸念を引き起こす」と述べた。マイクロソフトは米国政府にロビー活動を行い、顔認証技術が「良い結果」をもたらすと、売り込んでいる。
ACLUのような団体は、この動きに強い不満を表明している。同団体のNarayanはマイクロソフトの倫理委員会の判断の妥当性に懸念を示している。「彼らはこのテクノロジーの運用に関し、適切な透明性を確保していない」とNarayanは話した。
米国の一部の州では顔認証テクノロジーの導入を禁止する動きも起こっている。サンフランシスコではこのテクノロジーの導入を遅らせる決定が下された。
マイクロソフトは顔認証技術の詳細の開示について、アマゾンやグーグルよりも前向きといえる。しかし、同社のAnyVisionに対する出資は、今後さらなる批判を浴びる可能性がある。