だがその電力は単に「PCを動かす」ためのものだけでなく、「PCを冷やす」ためにも使われており、なんと世界の1%(データセンタのサーバーの冷却による電力の数値)の電力が「PCを冷やす」ために費やされていることをご存知だろうか。
データセンタで利用される電力のうち、その半分近くが冷却のために使われており、AIがより積極的に活用されていく将来には、世界のおよそ10%の電力が冷却のための空調や冷房のために必要になるだろうという予測もある。
こうした世界規模でますます深刻化する「電子機器の冷却問題」を、“工業材料” から解決しようと取り組む名古屋大学初のベンチャー企業がU-MAPだ。名古屋大学の工学部内にオフィスを置く同社はCEOに西谷 健治、COOに前田 孝浩、そしてCTOには名古屋大学未来材料・システム研究所教授の宇治原徹の3人が取締役を務め、2018年には数千万円の資金調達も実施している。
「高熱伝導」と「絶縁」を実現したAlNウィスカー
スマートフォンの充電やPCなど電子機器に負荷がかかった際に起きる発熱。普段の生活でもよく経験するこの発熱現象の原因は、内部に使われている「絶縁樹脂」によるものだ。電気を通しにくい性質がある反面、熱伝導率も低いため、内部の熱を遮断してしまい外に逃さなくしてしまう。
U-MAPが開発した「AlNウィスカー」は、この樹脂による発熱問題を解決に向けている。
「AlNウィスカーは、窒素とアルミニウムの合成により高熱伝導かつ絶縁体を実現したファイバー状のセラミックス。熱は通すが、電気は通さないということです。このような物質は実は滅多にありません。例えば、お茶碗のようなセラミックス(陶器)は通常は熱の通りが悪い。お茶碗に熱いお湯が入っていても手で持てますよね?」(宇治原)
窒化アルミニウム自体は発見されていたが、ファイバー状になることは稀だったという。そこで窒化アルミニウムのファイバー状の素材を量産する仕組みをU-MAPは作り上げた。