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2019.08.23 13:00

22歳・小川嶺が提唱する「働き方のインフラ」。個の時間価値を創出する挑戦

世界を変える30歳未満の30人を、「アート」「エンターテインメント&スポーツ」「ビジネスアントレプレナー」など10のジャンルから選出する「30 UNDER 30 JAPAN」。Forbes JAPANと、若手ビジネスパーソン向けWEBマガジン「EL BORDE」による「EL BORDE特別賞」が、ビジネスシーンでのさらなる活躍が期待される3名に贈られた。

その受賞者のひとりが、「特定の時間だけ働きたい」働き手と「特定の時間だけ働いてほしい」雇用主を結ぶマッチングアプリ「Taimee(タイミー)」を世に出した代表取締役社長、小川嶺だ。最初の起業は18歳。21歳でTaimeeを立ち上げ、昨年末に第三者割当増資で3億円の資金調達を達成。大きな話題を呼んだ。

現在登録者数10万人を超えるTaimeeの代表として、小川が目指すものとは。


「驚きました。『EL BORDE特別賞』に選ばれたこと自体がうれしかったですし、Forbes JAPANは経営者にとってあこがれの媒体なので、いつか載りたいと思っていました」

小川は受賞の喜びをこう言い表した。起業家として成功を目指す以上、世界トップ5に入る経営者になりたいと壮大な志を持つ。小川にとって今回の受賞は、その目標に一歩踏み出せたという。

500万円の資金調達に成功したが受け取らず、会社を一度リセット

小川が起業家を志したのは18歳。最愛の祖父の死がきっかけだった。

曽祖父は牧場や不動産経営などを手がける起業家だったが、祖父が知人の連帯保証人になったことから倒産。事業を失敗させたことを生涯悔やんでいた祖父の姿を見ていた小川は、祖父の死を機に「自分は悔いのないように、いつか世界に名を残す起業家となる」と心に誓った。

そして、大学入学前に小川の起業家としてのキャリアがスタートする。主婦が空き時間を利用して学生のために食事を作る、民泊ならぬ「民食」のマッチングサービスだった。しかし、知らない学生が自宅に入ることに主婦が躊躇するなど課題点も多く、成長が見込めないと判断し、サービスを断念した。

20歳になってから、今度はファッションのアプリを開始する。自分の体形と自分の好みを打ち込むと、人気ファッションブランドから似合う服の提案がもらえる、バーチャル接客ツールだった。

「僕は男子校出身で中学・高校はサッカー生活。ジャージばかり着ていたので、大学のキャンパスにファッショナブルな人が多いことにショックを受けました。そこで自分も簡単にオシャレになれる方法はないか考えたのがアイデアの発端です」

2000年代前半は資金調達がブームとなり、世間を賑わす時期でもあったという。小川も多くの投資家にアプローチするが、厳しい意見を耳にすることになった。ファッションに興味のない男性は、ファストファッションとハイブランドの違いはわからない。流行の服を買うことなんてほとんどない。中には「そもそも、そういうサービスを使うのか?」といった、アプリの意義を根本から否定されることもあった。

小川は投資家たちのアドバイスに応じプランを変えていったという。最終的には、オシャレにこだわる女性のほうが購買単価が高いこともあり、試着をするだけで割引になる女性向けサービスへと変更した。

その結果、500万円の資金調達に成功する。だが小川は自分の足元を見つめ直した。

「資金調達が決まった時、自分が目指していた山の頂上に立ったような気分になりました。しかし同時にふもとを見下ろした時、なぜ僕が女性向けファッションアプリをやっているのかという問いに対しての回答を持ち合わせていないことに気づいたのです」

もともと服のセンスがない自分のために作ったファッションのマッチングアプリのはずが、女性向けのサービスへと転化した。しかし、これは自分が手がけるべきものではなく、ファッションに興味のある女性の方が成功確率が高いのではないか──小川の中で、サービスを継続する根底が崩れた瞬間だった。

そこで彼は思い切った決断を下す。資金調達した500万円を受け取らず、会社を畳んだのだ。しかしこの決断は、彼を奈落の底へと突き落とすことにもなる。

「自分が作ったサービスを実現するために、運営に携わっていた5人の仲間に対し、会社を立ち上げてから畳むまでの1年半という時間を奪ってしまった。ファッションではなく、他の道に進んでいたら彼らは成功していたかもしれないのに。優秀なメンバーをうまく導けなかったことへの責任を痛感しました」

小川自身も、学生社長としての充実した日々から、授業に通う普通の大学生に戻ったが、自分の時間価値が一気に低下したと感じ、ストレスとなっていく。

社長業は日々のタスクが多く、営業や企画書の作成、会議、取材を受けることなど、分刻みのスケジュールをこなしていた。しかし学生に戻ったら、SNSを見るなど、いつやってもいいことをしながら過ごす時間が増えていた。

「SNSなどを見ることが悪いわけではありません。ただ、それは、すべての選択肢が可視化された上で今の自分の行動を選んでいるのかなと」

選択肢を考えずに目の前にあるものを選んでいると、視野が狭まった中で生きてしまっているのではないかという危惧は、成功した今でも小川は感じるという。


「今を生きるための選択肢を生むため」空き時間活用アプリを立ち上げ

一緒に戦ってきた仲間の時間を無駄にした後ろめたさ、そして社長から学生に戻り時間を持て余している自分へのストレス。挫折を感じることによって一旦谷底へ突き落とされた小川は、這い上がるしかない状態だからこそ、次なるアイデアを見つけられた。

「空いている時間を入力したら、その時間を誰かが欲してくれるアプリを作ろうと思い立ちました。まずは、暇な今の自分を救いたい。そして自分が世の中から求められている感覚が呼び起こせるものを作りたいと思ったのです」

特定の時間だけ働きたいユーザーと、特定の時間だけ働いてほしいユーザーを結び、「時間の経済圏」を構築する目的でワークシェアリングアプリ、Taimeeが誕生した。
例えば、ランチタイムだけ大混雑する飲食店と、突然授業が休講になって夕方までの予定が空いた学生がいたとする。飲食店がTaimeeのアプリで数時間だけ学生を雇用することで、店舗側はランチタイムだけ欲しかった人員が確保でき、学生側は余った時間を活用し賃金を得ることができる。

「1日の、しかもたった数時間だけ」という超短時間アルバイトのスタイルは、2018年のリリース開始後わずか約1カ月で導入100社、利用者数7000人を突破。現在は2000店舗以上が導入し、利用者数も10万人を超え、ワークシェアリングアプリとしての成功へとつながったのだ。


 
8カ月で3回の資金調達に成功

Taimeeを拡大するにあたって、サイバーエージェントの藤田晋氏が自ら手がける「藤田ファンド」を筆頭に、エン・ジャパン、オリエントコーポレーションなどから、第三者割当増資による3億円の資金調達を達成したことが、大きな起点のひとつだったと小川は振り返る。

当時は、Taimeeのサービスがローンチしてからまだ3カ月ほど。伸びている実感はあったが、今後このサービスがどうなるのかは予測がつかない状態だった。上場している企業から見れば小さな成長でしかなく、投資するには危険だと考えるのがセオリーだ。

「投資をお願いしたとある会社には、『まだ分からない。もうちょっと見たい』と言われることもありましたが、サイバーエージェントの藤田さんは真剣に話を聞いてくれましたね」

小川は、働き方を根底から変える「働き方のインフラ」を作ると藤田氏に宣言し、熱く夢を語った。まず現状、世の中が困っていることを解決するべきだと。

小川は夫婦経営の飲食店を例にあげた。夫婦だけで1日12時間以上毎日働いていて、根本的に人手が足りないとする。そこに飲食店でのアルバイト経験者が、空いた時間でその夫婦の店に働きに行くと、夫婦は少し休む時間ができる。その結果、夫婦が過労で倒れることもなくなるうえ、時間に余裕ができた分、味をもっと追求することができ、質の向上にもつながる。

「お互いが助け合えるサービスを作ることが、世の中には求められていると、藤田さんにアピールしました」

藤田氏からは「大手が参入してきたら勝てるのか」などといった、出資者として、そして経営者としての厳しい質問が飛んだ。小川は事業計画や成功へのロジック、熱い思いなどを伝えた。2人で議論をたたかわせた結果、藤田氏から資金提供を受けられることとなる。

「最終的には『やりきれるのなら、やれるんじゃないか』と藤田さんが認めてくれました。ポテンシャルがある事業は世の中に数多くある。でも僕がそれを完遂できる経営者か否かを藤田さんに試されていたのだと思います」

藤田ファンドは2014年秋に凍結していたのだが、2018年12月末、再開後の投資第1号として選ばれたのがTaimeeだった。経営者の魅力を重視した投資をする「藤田ファンド」は、小川の人間性、そしてTaimeeが若者の働くインフラになる可能性を評価したのだろう。当時はTaimeeの3億円資金調達とともに、藤田ファンドの復活もニュースとなった。

超フラットでハイスタンダード。個の価値を上げていく組織づくり

資金調達を始め、事業を発展させていく上で、人を惹き付ける、周囲の人を巻き込むには何が必要なのかを小川に聞くと、こんな答えが返ってきた。

「夢でしょうか。自分が将来の夢を楽しそうに話していたら、この人についていったら楽しいと思ってもらえますよね」

実際、Taimeeの社員や協力者、入社希望者などに自分の夢を語ることも多いという。

「自分の夢も語るし、相手にはまず、何をしたいのかを尋ねます。そして、何歳であれ、キャリアプランを一緒に考えていきます」

話の中で小川は、「こういうことならTaimeeでやっていくうちに成長できると思う」、「そういうものをもっと手軽にやれる環境を作れたら楽しくないですか? 息子や娘に教えたくないですか?」といった話をする。具体的に何をするか、何を目指すかなどを話すことにより、相手にも当事者意識が生まれるという。

「当事者意識が生まれると、コミット量が増えて、残業などで愚痴を言うようなこともなく、働きたいから働くといった雰囲気ができる。そういう環境整備を社内で今進めています」

Taimeeの社風は「超フラット」だと小川は言う。社長の小川は22歳、最年長の社員は39歳。小川の言葉を借りると組織の「ごちゃ混ぜ感」が役職も年齢も関係なく発言できる風通しの良さにつながっている。社員だけではない。インターン生も社員総会で意見を出しているという。

小川は、もうひとつの社風として、「ハイスタンダード」というキーワードを挙げた。

「『当たり前の目線を高く』。自らの能力を上げていくよう促しています」

社員たちが目線を高くし、ひとりひとりの能力、個の質を上げていくことによって、結果的に会社が発展していくことにつながっていく。

「いつ大手や競合他社が同じ領域に攻めてくるか分からない中で、個々がどこまで質を高めていけるのかが、ベンチャーにとっては勝負です。本も好きなように買っていいし、勉強会に行ってもいい。『会社が相当なスピードで成長しているなか、自らも成長しないと置いていかれるよ』と社員には話しています」

社員ひとりひとりの質を高めたい──それは社員に対する小川の愛情だ。どんな会社でも倒産するリスクをはらんでいる以上、組織の一員としてだけではなく、一個人として今後、転職市場でどれほどの価値をアピールできるのかが必要となってくる。

だからこそ、高い意識を持ち、個の質を高めていくことが働く上で大事であり、それが会社から従業員に残せるバリューだと考える。

「インターン生だろうと正社員だろうと、自分の市場価値を上げることを一緒に考えて、正しい道に導くことが、彼ら個人の力を上げることにつながってくる。だから個の質を重視しています」



Taimeeは夢の実現のひとつ。会社イコール自分でもある

スーパーフラット、ハイスタンダードのほかに、小川が社員に向けて言い続けていることがある。それは、「ワークハード・プレイハード」だ。

「社員には働くのも遊ぶのも、本気でやれと言っています。しかし、そもそも『働く』と捉えることがよくない。僕は働くのと遊ぶのとの境目がなくなるべきであり、誰しもが遊ぶように働く時代になれば、日本の生産性はもっと上がっていくと思っています」

今後、Taimeeはどのように進化していくのかを尋ねると、現在は飲食系が中心だが、ホテル、物流、コンビニ、アパレルなどに進出すると同時に、東京など首都圏だけではなく、地方にも広げていきたいと小川は語る。

例えば、地方の人気観光地を旅しながら働くというライフスタイルが定着すれば、地方の慢性的な人手不足を旅行者が救うこともできる。いろいろな人が自分の経験を活かすことで、日本全国、そして世界中の人手不足を解決したいと、小川は強く思っている。

「ある調査によると、日本は今、世界で最も労働力が不足している国だそうです。今後日本が労働力不足という課題を解決できれば、そのモデルケースは世界でも展開できる。日本に次いで労働力不足で悩む国、ルーマニアや台湾、香港などにも進出可能な事業プランになる」
もっと世の中をどうよくするべきか、ずっと考え続けて追求していきたいと話す小川。世の中の課題を見つけ、誰かが解決すべきなら自分がやる、という姿勢は昔からで、生粋の起業家気質だと自己分析するが、すべてをビジネスに結びつけようとする訳ではない。

「みんなが平和に過ごせるのが一番。お金儲けは二の次ですね」

お金儲けで終わる人生ではなく、世の中に求められる人材になれたのか、というのが人生では大事であり、スティーブ・ジョブス氏のように、亡くなった時、世界中が悲しみ、もっとあの人に生きていて欲しかった、と思われるかどうかが人としての本質だという。

「承認欲求は強いと思います。誰かに期待されたい。誰かから求められたい。だからこそ、自分の実現したい世界を達成するために頑張ろうと思いますね」

彼の人生の軸となっているのは「死生観」。18歳の時に祖父が亡くなった際、死を強烈に意識し、その時から起業家になることを決意。そして自分が死ぬまでになにをすべきか、そのために20代、30代、40代をいかに過ごすべきか、という逆算方法でライフプランを組み立てている。

死を強く意識しているが、決してネガティブではない。いつ死ぬかわからない人生だからこそ、後悔しないように生きていくため、有限の時間を最大限に使おうと毎日を充実させている。


小川 嶺(おがわ りょう)

1997年、東京都生まれ。18歳で最初の事業をスタートし、立教大学1年生で学生団体RBSA(起業家育成団体)を立ち上げ、2年生のときに試着をするだけで割引になるサービスRecolleを登記、3年生でタイミーに登記を変更して再スタート。現在、タイミー代表取締役社長として、職業マッチングサービスを展開する。


【共通質問】

・自分を色に例えるなら? 

オレンジ。明るく元気で、主張が強すぎるのではなく、周囲を巻き込んでいくイメージだからです。

・自分を一言で表すとしたら?

「巻き込み力」でしょうか。藤田晋さんもそうですし、南場智子さんや堀江貴文さんなど、いろいろな方に支援してもらい、本当に恵まれていると強く感じます。今は経営者を巻き込んでいますが、今後は日本人全員を巻き込むような経営者になり、日本企業としてグローバルに戦っていけるような企業を作りたいです。

・あこがれのOver30は?

海外ファッション通販サイト「BUYMA」(バイマ)を運営する、エニグモ代表の須田将啓さんです。須田さんと会ってなかったら、おそらくTaimeeは生まれていませんでした。須田さんが「Taimeeは世の中を変える」とアドバイスしてくれたおかげです。

他にも、藤田晋さんはもちろん尊敬しかないし、DeNA創業者の南場智子さんは経営者の生きざまというところで通ずるものがあります。

・自分が人より秀でた才能があると感じること。逆に苦手なことは? 

スケジュール調整など、こまめなことは苦手。得意なのはユーザー目線になることですね。一般市民としてどういうサービスが欲しいかを突き詰めて、自分でプロダクトを生み出していくのが得意です。

・人生最大の挫折は?

ファッションアプリの会社を畳んだ時です。メンバー5人の1年半を奪ってしまった罪悪感で一気につらくなりました。人生の時間は有限だなと意識し始めた瞬間でもあります。でも、自分の中には、世の中にある課題を解決したくなる、根っからの起業家気質みたいなところがあるからこそ、そうした挫折を克服できたのではないかと思っています。

・40歳の時に自分は何をしていると思う?
まずは5年で日本を代表する会社になりたい。そして20年後には世界トップ5の会社に。40代は世界トップ5の経営者になることを目指します。

・仕事以外の時間の使い方は?

仕事と遊びが自分の中では常に一緒なので、仕事以外の時間、という概念はないです。『ドラゴンボール』の孫悟空がスーパーサイヤ人になった状況をずっと保っているのを、無意識にやっている感じです。

・同世代のビジネスパーソンに向けて一言

「人生は1回きり」ということですね。僕は祖父の死をきっかけに、人生、死から逆算して今自分が何をすべきか、と考えるようになりました。自分の人生の終わりを意識すると、20代、30代をいかに過ごすかが見えてくると思います。


EL BORDE」とは

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