ビジネス

2019.08.02

「CEOアクティビズム」の牽引者は世界にどう働きかけるのか

(左から)ローズ・マーカリオ、マーク・ベニオフ、ティム・クック、

自社の利益に直接関係しない社会問題や政治的問題に対して発言し、行動を起こす。そんな「CEOアクティビスト」たちは、世界にどう働きかけているのか。

セールスフォース・ドットコム、アップル、パタゴニア、3社のCEOの例を紹介しよう。


マーク・ベニオフ/セールスフォース・ドットコム CEO
──信念があれば、立ち上がれるはず 



「あなたはどうするのですか?」

2015年3月、マーク・ベニオフは決断を迫られていた。

当時、米中西部インディアナ州で宗教の自由を保護する名目で「宗教的自由回復法」に関する法案が成立。宗教的な立場を利用して一部の事業者がLGBTQ(性的少数者)へのサービスを拒否しかねないとして全米から非難が殺到していた。冒頭のように、動揺した社員たちもベニオフへ電話をかけていた。

そこで、彼はすぐに当時のマイク・ペンス州知事(現米副大統領)にツイッターで「法案に署名するなら、インディアナ州への投資を削減する」と伝える。

リスクのある決断だった。州政府、思想の異なる社員、あるいは顧客からの反発だってあり得た。それでも、ベニオフは社員、そしてLGBTQコミュニティに寄り添う決断を下したのだ。すると、それに呼応するように100社以上のCEOが同じことを表明したのである。ベニオフは「時代は変わった」のだと語る。

「20年前であれば、大事なのは会社や株主の利益で『商売は商売』」考える向きもあったかもしれません。でも、今日のビジネスとは世の中をより良くすること。だからこそ、現代のCEOはそれが環境であれ、人権保護であれ、あるいは企業の社会的責任(CSR)で貢献できる範疇であれ、世界により良いインパクトを与えることが求められているのです」

経営者の果たすべき責任は多岐にわたり、いっそう重くなっている。それでも経営者が、ステークホルダーのために立ち上がる勇気を持てない場合はどうすべきか? ベニオフの答えは明快だ。

「信念があれば、人のために立ち上がることができるはず。できないときは、自問してみることです。『なぜ、他の人たちのために立ち上がれないのか』『信念が持てない理由とは』。原因がわかれば、それと向き合えばいい。そうすれば、自ずとすべきことが見えてくるでしょう」
次ページ > ダイバーシティへの理解、「言葉よりも行動を」

文=フォーブス ジャパン編集部 イラストレーション=アレクサンダー・サヴィッチ

この記事は 「Forbes JAPAN 社会課題に挑む50の「切り札」」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

ForbesBrandVoice

人気記事