ビジネス

2019.08.03

シカゴ大講師直伝! すべての社長に「ブランディング」の視点が重要な理由

シカゴ大講師 イラン・ジェバ(Ilan Geva)


まずはポジショニングです。ブランド戦略もポジショニングもできていません。彼らは製品やサービスがあることで十分だと思っているのですが、競合との差異化ができていません。ですから、私は彼らに「ダメだ、ダメだ。マーケティングにお金を使ってはいけない。特定のポジショニングがないと、『Everybody Else』で終わる」と言います。

それから彼らとじっくり膝を突き合わせて、ブランドビジョン、ミッション、ポジショニング、戦略を共に考えることになります。彼らはそれまで製品やサービスがあって、単に広告にお金を使えばいい、と思っていたのです。

──ブランドとは何でしょうか?

他人から「私を信じて」と言われただけで信じる人はいません。言うまでもなく、ブランドは企業が決められるものではなく、顧客や従業員、その他企業と関わる人たちとの関係性の上にあります。ブランドを強めるためには、それらの徹底した分析が必要になります。

ナイキの創業者フィル・ナイトは、スターバックスのハワード・シュルツやアップルのスティーブ・ジョブズと並んで、ブランドと経営者を語る上で外せない人物ですが、ナイキ社では、マーケティングをするかわりに、「Brand Strength Monitor」という特別な手法を取っています。

製品がショッピングモールのどこにどのように並ぶかや、広告がどこでどのように受け止められるかは重要視せず、従業員や顧客と、ナイキというブランドが彼らにとってどのような意味を持つのか、何を想起させるのか、何が良くて何が足りないのかを徹底して語るのです。

──企業トップのブランディングへの関わりで印象的な事例はありますか?

6年前、73歳でもまだまだエネルギッシュなオーナー兼CEOがいました。名前は言えませんが、アメリカでとても有名な社長です。彼はとても元気で、後継者のことについて全く考えていませんでした。次第に、周囲の人が心配し始めたのです。もし突然心臓発作などで倒れたりしたらどうなるんだろう?と。

そこで、「継承プラン」作成計画を始めることになりました。私は、オフィスに机を置き、マネジメントチーム、社員、クライアント、サプライヤー、元社員など、会社に関わるすべての人にインタビューを始めました。その会社の精神やパーソナリティに関する考えを得るためです。結果、私はその社長の前で宣言するに至りました。

「もし会社に未来が欲しいなら、あなたにはやらねばならないことがある」、と。それからそのプロジェクトは6カ月かかりましたが、最終的にはマネジメントチームの考えの相違を洗い出すことができ、解決策を提示できました。
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文=岩坪文子

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