ビジネス

2019.08.06

米自動車業界を二分する、カリフォルニア州の排ガス規制

Getty Images


カリフォルニア州のサイトへ行けば、走行距離7500マイル(1万2300キロ)未満のクルマはすべて新車扱いとなり、最新の排ガス規制を充たしていなければ販売することができないとされている。また他州から持ち込む場合でも、排ガス規制をクリアしていなければいけない。

自動車メーカーにとっては、オバマの基準は厳し過ぎて製造コストがかかりすぎるという懸念があったが、一方、トランプ政権の基準も各州の環境局の合意を得られないと心配していたところだった。そこへきて、カリフォルニア州の基準は、そのちょうど真ん中なので、より現実的であったという判断もあった。

しかし、自動車業界は、巨額の費用でロビイストを雇い、トランプ大統領に対してオバマ基準の緩和を嘆願していたところだったので、一部のメーカーが政府と喧嘩しているカリフォルニア州と合意契約を結んだことで、ホワイトハウスの逆鱗を買うことは必至だ。他の13社がホンダやフォルクスワーゲンなどの4社と協調しなかった理由は、おそらくそこにあると考えていいだろう。

州ごとに異なる有料道路の支払いシステム

このコラムでも、時折、述べているように、日本から来ている筆者にはアメリカの州が持つ独自性は、魅力的な部分もある反面、不便なところもとても大きい。過去にこのコラムで、サマータイム(夏時間)を採用する州としない州が同居する混乱を指摘した。

今回の排ガス規制にしても、もし筆者がカリフォルニアに引っ越すとすると、いま乗っている自家用車は、連邦法上は合法でも、カリフォルニア州法には合致しないので、他州で売り払って来なければならないという不便さを抱えることになる。

日本を例にとれば、北から南まで、どの有料道路もRFID(Radio Frequency Identifier)システムが設備さえされていれば、ETCでスイスイ走れる。ところがアメリカでは、RFID支払いシステムは各州で独自に開発しており、隣接する州と連携することがあっても、そのグループを離れれば互換性がないのでとても不便だ。

筆者が経験しただけでも、カリフォルニア州はFasTrak、テキサスはTxTag、カンザスはK-Tag、東海岸北部はEZ-Passと独自のRFID支払いシステムを採っており、すべて互換性はない。

しかも、拳大もあるプラスチック製の装置はフロントガラスにつけねばならず、見苦しいばかりか、使用するときには引き出しを引くように本体からスライドさせてRFID感度を上げねばならないものもあり、せっかくの新車の美観を台無しにしている。これが近代アメリカのデザインかと思うと、スティーブ・ジョブズが天国で苦笑しているといつも思う。
次ページ > 自動車だけでおさまるか?

文=長野慶太

ForbesBrandVoice

人気記事