フェイスブックの広告事業を根本から脅かす、EU裁判所の判決

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テック企業の多くは自社のサイトやアプリの利用者の行動を追跡しているが、フェイスブックほど多くの個人データを蓄えている企業は稀だ。しかし、EUが先日下した判断により、フェイスブックの事業モデルが危機に追いやられるかもしれない。

7月29日、欧州司法裁判所は自社のウェブサイトに「いいねボタン」を埋め込む企業が、欧州の一般データ保護規則(GDPR)のルールを遵守する必要があるとの判決を下した。この判決により、SNSのプラグイン経由でEU圏の人々のデータをソーシャルネットワークに送信するサイトは今後、事前にユーザーから明示的な同意を得る責任を負うことになる。

フェイスブックがデータ収集を行うサイトは、世界で840万サイト以上に及ぶとの報道もある。あなたが仮に、ホワイトハウスのサイトを訪問していたら、フェイスブックはそれを知っている。ECサイトや、ニュースサイトだけでなく、ティンダーのような出会い系サイトも、フェイスブックのいいねボタンを設置している。

ここから得られるデータはフェイスブックの貴重な収入源だ。その人物の興味や関心に基づいて、彼らは広告を配信しているからだ。

フェイスブックのSDKはモバイルアプリの60%以上に組み込まれている。しかし、EUの今回の決定に従うと、彼らはこれまでのような形でのデータ収集が行えないことになる。これは同社にとって重大な問題だ。

いいねボタンやアプリ内のSDKからのデータが収集できなくなれば、フェイスブックの広告ビジネスは大きなダメージを被る。2014年にローンチされた、Facebook Audience Networkは同社のターゲット広告の成長を支え、フェイスブックのアカウントを持たない人々のデータまで把握していた。

仮にフェイスブックのいいねボタンを設置したサイトの全てに、利用者の同意を得ることが義務づけられれば、多くのサイトはボタンの掲載をやめるだろう。そして、フェイスブックはターゲット広告の配信能力を失うことになる。

ただし、EUの措置で打撃を受けるのはフェイスブックのみではない。ツイッターやリンクトイン、ピンタレストなどのあらゆるソーシャル系のプラットフォームが影響を受けることになる。

編集=上田裕資

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